太陽工業コラム

倉庫建築の基礎:4つの種類別の特徴やメリット、デメリットから施工事例まで解説

物流網を計画する際に「最適な倉庫建築の利用」は業務効率化・物流最適化に重要な役割を果たします。しかし、目的に合致した倉庫の選択は難しいです。倉庫の特徴を理解し、最適な倉庫を選びましょう。

本記事では、これから倉庫の建築を計画している方へ、主要な4種類の倉庫建築「在来工法・テント倉庫・プレハブ倉庫・システム倉庫」について解説します。

倉庫建築で知っておきたい「倉庫の種類」

倉庫を建築する上で、把握しておきたいことは、倉庫建築が以下の4種類に分類されることです。

  • 在来工法
  • テント倉庫
  • プレハブ倉庫
  • システム倉庫

それぞれのメリット・デメリットを正しく把握して、倉庫の種類の選択に活かしましょう。

短工期・安価が魅力的な「テント倉庫」

「テント倉庫」は、骨組みを構築したうえでシートを被せて作られる構造の倉庫です。

光を透過する生地を利用することで、内部が明るくなる特徴があるほか、以下の4つの特徴を持っています。

  • メリット:短工期ですぐに利用できる
  • メリット:施工費用が安い
  • デメリット:テントの生地が劣化しやすい
  • デメリット:定期的な張り替えが求められる

メリット:短工期ですぐに利用できる

テント倉庫は、短工期ですぐに利用できる点が最大のメリットです。金属の骨組みに軽量で高い強度を持つ膜材を被せる構造の倉庫で、シンプルな構造が短工期を可能にしています。

設計・施工期間が短く、規模や現地の状況にもよりますが、着工から最短で2ヶ月で施工可能です。

メリット:施工費用が安い

シンプルな構造から、施工費用が安い点もメリットに挙げられます。

施工費用が安い理由は、以下の3点です。

  • システム化されているので設計費用が安い
  • 使用する部材が少なく部材・人件費が安い
  • 軽量で地盤が弱い土地でも地盤改良が不要

関連記事:倉庫建築の費用を詳しく解説|種類、構造別の相場から安く抑える方法までわかる

デメリット:テントの生地が劣化しやすい

一方で、テントの生地が劣化しやすい点はデメリットです。テント倉庫で使用される生地は、プレハブ倉庫やシステム倉庫で利用される外装と比べて劣化しやすく、耐久性の目安は約10年とされています。生地のほか、生地を固定するロープの劣化・緩みにも注意が必要です。

デメリット:定期的な張り替えが求められる

施工費用が安いことをメリットに挙げましたが、定期的な張り替えが必要で、長期的にはほかの倉庫と変わらない費用を要する可能性があります。また、台風で飛来物がぶつかる、侵入目的で切り裂かれる、といった場合も補修費用が生じる点にも留意が必要です。

自由な設計が魅力的な「在来工法の倉庫」

「在来工法の倉庫」は、柱や梁を設けて、一般住宅と同様の構造で建てられます。オーダーメイドで製作する在来工法の倉庫は、以下の特徴を持っています。

  • メリット:目的に合わせて自由に設計できる
  • メリット:長期間使用できる
  • デメリット:施工費用が高額になることがある
  • デメリット:設計・施工期間が長期化する

メリット:目的に合わせて自由に設計できる

在来工法の倉庫の最大のメリットは、目的に合わせて自由に設計できることです。収納する荷物に合わせて柱や梁の位置を変更し、部分的にスパンを飛ばすなど、ほかの倉庫にはない自由度の高さを持ちます。

メリット:長期間使用できる

仕様によっては長期間の供用に対応できる点もメリットです。使用する構造材や外壁・内装を自由に選べるため、設計・施工内容によっては耐久性の高い素材を利用することで、30年を超える耐久性を確保できる可能性があります。

デメリット:施工費用が高額になることがある

自由に設計でき、長期間供用できる可能性がある一方で、施工費用が高額になる点はデメリットです。強度を担保するために太い鋼材を利用する箇所が多くなる点、白紙状態から設計する必要がある点から、建築総額が高くなる傾向にあります。

デメリット:設計・施工期間が長期化する

設計・施工期間が長期化する点もデメリットに挙げられます。在来工法は、設計・部材製作・施工といったセクションごとに業者が変わることが多く、人件費が嵩みがちです。部材をオーダーメイドで作成する場合は、さらに施工費用は高額になるでしょう。

増改築が容易な「プレハブ倉庫」

「プレハブ倉庫」は、工場で生産した部品を現場で組み立てて作られる倉庫です。規格が決まっているプレハブ倉庫の特徴は、以下のとおりです。

  • メリット:増改築が簡単にできる
  • メリット:短納期で建築できる
  • メリット:店舗・事務所としても利用できる
  • デメリット:防火対策が必要になると高額になる
  • デメリット:サイズ、デザインの自由度が低い

メリット:増改築が簡単にできる

一定の規格の部品を組み立てるプレハブ倉庫は、簡単に増改築できる点が最大のメリットです。事業拡大・縮小に合わせて倉庫の規模を変更することも容易で、倉庫を使用し終えた場合に簡単に解体・撤収できます。

メリット:短納期で建築できる

依頼から完成までの納期が短いことも、大きなメリットです。規模によって左右されるものの、1ヶ月から3ヶ月ほどと、テント倉庫と変わらない速さで建築できます。特殊な部材を使用せず短納期であることから、施工費用も比較的安価である点もメリットです。

メリット:店舗・事務所としても利用できる

プレハブ倉庫は工場で生産された規格品を利用するため高い耐震性を確保しやすく、外壁材の仕様によっては長期耐久性も期待できます。

オプションで断熱材を利用できるケースもあり、高い住環境を実現することも可能です。以上の特徴から、倉庫の一部を、費用を抑えながら店舗・事務所として利用することもできます。

デメリット:防火対策が必要になると高額になる

費用を比較的安く抑えられるプレハブ倉庫ですが、ほかの倉庫と同様に、敷地境界線の3mまたは6m(階数によって異なる)以内にほかの建物がある場合は防火対策が必要になります。

必要な防火対策によりますが、費用が跳ね上がる可能性があるので、防火対策の必要性は見積もりの段階で確認が必要です。

※出典)建築基準法 第二条六項

デメリット:サイズ、デザインの自由度が低い

規格品を利用するため部材の寸法が決まっており、外観デザインの自由度が低くなる点はデメリットです。また、一定間隔で柱・梁を入れる必要があるので、倉庫に入れられる物の種類が限定されることもあります。

高い耐久性と寿命が魅力的な「システム倉庫」

規格化された部材を利用しながらも設計の自由度が高いのは「システム倉庫」です。設計・施工を標準化したシステム倉庫の特徴は以下のとおりです。

  • メリット:自由度の高い設計を行える
  • メリット:強度が高く地震・台風などに強い
  • デメリット:外観デザインはシンプルになりがち
  • デメリット:ほかの工法と比べて費用と工期がかかる

メリット:自由度の高い設計を行える

システム倉庫は、標準化された設計・施工内容内であれば要望に合わせたカスタマイズができ、自由度の高い倉庫を建築できます。プレハブ倉庫と同様に、仕様によっては事務所や店舗としての利用も可能で、汎用性の高い工法です。

メリット:強度が高く地震・台風などに強い

定められた規格を用いるので一定の品質で施工でき、高い強度を期待できる点もメリットです。倉庫の強度を計算で求められるので、地震や台風に対しても期待通りの耐力を期待できます。仕様によっては30年を超える寿命も期待でき、長期間の供用を予定する倉庫に勧められます。

デメリット:外観デザインはシンプルになりがち

一定の規格で製造される部材を利用するため、機能性や耐久力を期待できる一方で外観デザインはシンプルです。デザインにも気を使う事務所・店舗では、期待に応えられない可能性もあります。

デメリット:ほかの工法と比べて費用と工期がかかる

在来工法より安価になるものの、テント倉庫やプレハブ倉庫と比較すると建築費用が高額になる点はデメリットといえます。一方で高い耐久性を持つことから、長期間の供用を前提とする場合はコストパフォーマンスが高くなります。

倉庫を建築するとき知っておきたい基礎知識

続いて、倉庫を建築する場合に知っておきたい基礎知識を紹介します。倉庫は、倉庫業としての営業を行うために国土交通大臣の登録を受ける「営業倉庫」と、倉庫の使用者が自らの貨物を保管するための「自家用倉庫」に分けられます。

本記事では、営業倉庫の一つである「普通倉庫」について、倉庫の種類や法令について解説します。

目的別に設定される「倉庫の種類」

普通倉庫は「1類倉庫・2類倉庫・3類倉庫・貯蔵槽倉庫・危険品倉庫・冷蔵倉庫・野積倉庫・水面倉庫」の8種類に分類されます。(※「野積倉庫・水面倉庫」は屋外で物品を保管する方法で、本記事では解説を省略します。)

※出典)倉庫業法施行規則 第三条

1類倉庫:グレードの高い倉庫

1類倉庫は、普通倉庫の中で求められる設備や構造基準が最も高い倉庫です。危険物に該当する第7類物品、および10度以下での保管が求められる第8類物品を除くさまざまな荷物を保管できます。

2類倉庫:耐火性能不要な倉庫

2類倉庫は、1類倉庫と比較して、求められる設備・構造基準が緩和された倉庫です。防火・耐火性能が不要になり、1類倉庫と比較して、保管できる物品の種類が減少します。

3類倉庫:防湿性能不要な倉庫

3類倉庫は、防火・耐火性能に加えて防湿性能も不要です。湿度や気温の変化に強い性質を持つ、ガラス製品や陶磁器といった製品が該当します。

貯蔵槽倉庫:バラ状液状用の倉庫

貯蔵槽倉庫は、タンクやサイロといった、密閉された倉庫を差します。液体やばら穀物を収容する倉庫で、倉庫の側面の強度が求められている点が特徴的です。

危険品倉庫:危険物・高圧ガス用の倉庫

危険品倉庫は、消防法で指定される危険物や高圧ガスなどを示す、7類物品を収納する倉庫です。保管する物品によって、消防法・高圧ガス保安法・液化石油ガスの確保及び取引の適正化に関する法律など、各種法律で満たす基準を達成する必要があります。

冷蔵倉庫:低温保管用の倉庫

冷蔵倉庫は、食肉・水産物・冷凍食品など、10度以下の温度で保管することが求められる荷物用の倉庫です。保管する物品、および保管に適した温度区分に従って、F4級からC3級まで、7つの等級に分類されています。

倉庫に関係する「法令」

倉庫を建築する場合に必要になるのは、法律の知識です。倉庫は火災が発生する可能性があるため、建築基準法上の特殊建築物にあたり、建築する前に建築確認申請を行う必要があります。同時に基準を満たす必要がある、消防法や都市計画法とともに解説します。

建築基準法 第6条第1項:建築確認申請の要不要

倉庫を建築する場合に確認するべきなのは、建築基準法第6条第1項に基づく、建築確認申請の要不要です。

(1)延べ床面積200m2以上(2)木造建築物の場合:3階建て以上・延べ床面積が500m2以上で高さが13m以上・軒の高さが9m超(3)木造以外の建築物の場合:2階建て以上・延べ床面積が200m2以上(4)(1)~(3)の建築物以外で、都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区、知事指定区域の建築物

上記に該当する場合は建築確認申請が必要です。

※出典)建築基準法 第六条一項

消防法 第17条第1項:消防用設備の設置

消防法第17条第1項では、消防用設備の設置について記載されており、出火時の備えについて確認されます。たとえば、延べ面積が500㎡を超える場合には、自動火災報知設備の設置が求められるなど、広さや倉庫の種類ごとに必要となる消火設備は変わります。

※出典)建消防法 第一七条

都市計画法 第29条:土地制限上の倉庫建築の可否

都市計画法第29条では、開発行為の許可について規定されています。土地によっては倉庫を建築できない恐れもあるので、事前に確認が必要です。なお、営業用の倉庫を建築できるのは、以下の6つの用途地域に定められた土地です。

  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

※出典)建都市計画法 第二九条

「どんな倉庫ができる?」倉庫建築の施工事例

近年の倉庫建築で主流となっているのは、高い耐久性と寿命、そして自由度の高い設計が魅力的なシステム倉庫です。どんな倉庫が例として挙げられるのか、システム倉庫の事例を紹介します。

システム建築:柱・梁のない長大な空間を実現

「野口運輸株式会社 坂東倉庫」は、各種作業の妨げになる柱・梁を極力排除した倉庫です。開口部はW5.0m×H5.5mの重量電動シャッター、およびW5.0×H4.5mの軽量電動シャッター2機を利用しています。

施設の主な概要は以下のとおりです。

  • スパンの長さ(m):20.8
  • 桁行き長さ(m):31.4
  • 施工床面積(m²):706
  • 軒高(m):8.4

システム建築:物流センターに適した効率的な倉庫

「丸協運輸株式会社」が栃木県下野市に建築した倉庫は、倉庫の中央部に支えとなる柱が一直線に配置された、開放性の高い倉庫です。側面には照明が付属した長大な庇が設けられ、荒天時でも効率を落とすことなく倉庫作業が行えるよう配慮しています。

倉庫の一部に、事務所としての機能を持つ室内空間も設けています。断熱機能も加えたため、エアコン代の削減をしつつ快適な環境の事務所を実現しました。

施設の主な概要は以下のとおりです。

  • スパンの長さ(m):不明
  • 桁行き長さ(m):不明
  • 施工床面積(m²):10,844
  • 軒高(m):不明

システム建築:災害に強い信頼感のある倉庫

松江市に建築された倉庫兼事務所は、耐震性に優れた特殊な接合方法を使用、なおかつ耐火構造を採用しているので、地震を始めとする各種災害への対応力が高い倉庫です。荷物を搬入・搬出するシャッター扉周辺は十分なスペースを確保するとともに、庇を大きく張り出しているので、多様な状況に対応できる点にも注目しましょう。

施設の主な概要は以下のとおりです。

  • スパンの長さ(m):25.00
  • 桁行き長さ(m):57.20
  • 施工床面積(m²):2,003
  • 軒高(m):8.50

システム建築:土地の造成で作った広大な倉庫

「株式会社戸田倉庫物流」の倉庫は、元々は大きな谷だった場所を造成して建築した倉庫です。倉庫内には支障となる柱・梁はなく、高い作業性が期待できます。屋根の一部を大きく張り出して庇としており、強風時も安心感がある構造です。

施設の主な概要は以下のとおりです。

  • スパンの長さ(m):34
  • 桁行き長さ(m):133
  • 施工床面積(m²):5,453
  • 軒高(m):7.15

まとめ

倉庫を建築する場合に知っておきたい、倉庫の種類や基礎知識、施工事例について解説しました。4つに大別される倉庫の中で、初めに検討するべきは「テント倉庫」です。

テント倉庫は、骨組みとシートという単純な構造で構築されるため、低コスト・短工期で施工できる導入時のハードルの低さに魅力があります。耐久性・耐候性の低さを指摘されることもありますが、適切なメンテナンスを施せば10年を超えても使用し続けられる耐久性能を持っています。

また、シートは光を透過させる性質を持つため、昼間は照明が不要なレベルの明るさを確保でき、作業性にも優れた工法といえるでしょう。こうしたメリットを有するテント倉庫は、先進的なメーカーや物流業者が多数採用しており、導入により効率的な倉庫運営を期待できます。

少しでもテント倉庫に興味を持たれた方は、創業100周年を迎え、国内シェアNo.1の「太陽工業株式会社」のサイトをぜひご覧ください。

テント倉庫への
お問い合わせはこちら

倉庫建設時に知っておくべきこと
すべて詰め込みました。

2024年問題解決の糸口

こんな方におすすめ
倉庫建設で何から着手すべきかわからない
・経済的に倉庫を建設したい
・どの種類の倉庫を建設すればいいのか
・とにかく、倉庫建設の基礎知識を付けたい
・2024年問題が気になるが、 何をすればよいかわからない

資料ダウンロードはこちらから

  • TOP>
  • 太陽工業コラム>
  • 倉庫建築の基礎:4つの種類別の特徴やメリット、デメリットから施工事例まで解説