太陽工業コラム
近年の夏は気温も湿度も高く、野外の労働環境としては過酷な状態が続いています。エアコンの効いた屋内ですら暑く感じることがありますから、空調も効かず風通しも良くない倉庫の中は、大変な気温になっています。
夏の暑さは不快なだけで済めば良いですが、倉庫中は人の作業が伴います。暑ければ作業効率は下がりますし、熱中症など、従業員の健康に害を及ぼす恐れもあります。保管物に対しても、高温では保管環境が良いとは決していえません。結露やいやな臭いにもつながっていきます。
倉庫や工場での暑さ対策はきちんとなされているでしょうか?この記事では、倉庫や工場の暑さ対策をご紹介します。正しい暑さ対策で、作業効率も健康もアップさせること間違いなしです。
日本の夏はだんだん暑く、長くなってきている
「夏が暑いのは当たり前」「暑いくらいでバテるなんてだらしない」と言える時代はとうに終わりました。気象庁によると、日本の夏の平均気温は、この100年で最高気温が1.5℃、最低気温では2.7℃も暑くなっています。
1.5℃なら大したことないと思われるでしょうか。あくまでも平均値ですから、ご自身の平均体温(平熱)が1.5℃上がった状態をイメージすれば、インパクトの大きさが分かります。
気温が高い日数もだんだん増えてきています。気象庁のデータが分かりやすいです(下図)。
(出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/)
グラフの下に行くほど最近の傾向を表しています。赤い部分が気温の高い日です。暑い日が多くなっていることが分かります。日本の夏はどんどん暑く、そして長期化しているのです。
熱中症による死亡者数は年間1,500人以上
暑さに伴い熱中症の被害も拡大しています。厚生労働省の統計では平成30年の熱中症による死亡者数は1,500人以上にのぼります。
近年では熱中症の死傷者数は400~500人台が続いていましたが、1,000人を超えたのは過去10年間でも平成30年を除いてありません。
さらに、休業の必要のある業務上の疾病者を含めた統計では、平成30年は前年の2倍超と報告されています。同じく職場での熱中症による死亡者数も昨年の2倍です。このように業務中の熱中症対策が、まさに急務の時代となりつつあります。
倉庫の中は40℃?倉庫や工場の暑さの原因は?
では具体的に倉庫の中はどのくらいの気温になっているのでしょうか?適切な温度と比較して説明していきます。
真夏の倉庫や工場で空調設備がない場合、屋内の最高気温は40~45℃になります。温度計を設置すれば自社の倉庫内でも計測できます。専門的な知識がなくても、人体に対して危険な水準であることがイメージできます。
厚生労働省では、業務における適正気温の基準値として、「WBGT(暑さ基準値)」を定めています。WBGTによると、倉庫内作業に適切な気温の上限値は26~30℃です。
実態と比べて、実に10℃~20℃も乖離しています。倉庫ではかなりの大規模な暑さ対策が必要なことが分かります。
作業強度によって適正温度が異なる(出典:厚生労働省)
※熱に順化していない人とは「作業する前の週に毎日熱にばく露されていなかった人」をさす
また、湿度の高さも原因となり、蒸し暑い環境が作られてしまいます。外とは違い倉庫内は無風の状態が続き、汗が蒸発しにくくなり、体内の熱を逃がすことができなくなります。
では、どうして倉庫の中はそんなに暑くなってしまうのでしょうか?
そもそも空調がないケースもありますが、多くは構造上に原因があります。
倉庫や工場内が暑くなる主な原因は屋根や壁です。面積が広く、広い敷地に建てられた倉庫は、屋根や壁が直射日光を受けて70℃近くまで熱せられることがあります。
特に倉庫の屋根や壁は薄い傾向にあり、また、二重になっていない等で、直接屋内とつながっています。そのため、部材に蓄積された熱がそのまま屋内に溜まってしまう構造上の特性を持っています。
こうして熱が溜まった倉庫内は、間仕切りもなく天井も高いことから空調が効きづらいため、どんどん高温になってしまいます。
倉庫や工場における暑さ対策
では、そんな暑い倉庫内で人の作業効率を高め、健康を守るにはどうしたら良いでしょうか?代表的な暑さ対策をご紹介します。
意識づけと水分補給の徹底
何よりも大切なのは、そこで働く人や管理をする人が、きちんとした知識を持って対策に乗り出すことです。まずは「倉庫内は危険なレベルで暑い環境だ」と自覚しましょう。
そのうえで、十分な休憩や水分補給が確実にとれるよう、管理する立場の人は一層気を付けるようにしてください。
空調服
空調服とは、ファンが組み込まれて、着衣内の空気を循環させる機構を備えた作業服のことです。汗を即座に乾かし、あせもや肌トラブルのお悩み解決にも有効です。機能素材を用いて透湿性を高めるなど、さまざまな商品が存在します。小型ファンのお値段は張りますが、近年は購入しやすくなってきました。
ただし、水で濡れるような環境や、ほこり・粉塵が舞う場所では、小型ファンが外気と一緒に取り込んでしまい故障の原因にもなります。また、インナーも汚れてしまうので注意が必要です。
(出典:アスクル)
スポットクーラー
エアコンの設置しづらい、効きづらい倉庫内の気温を下げるにはスポットクーラーが効果的です。特定の作業スペースや人の通るところに設置できれば、かなりの冷却効果を期待できます。
購入費用が高く、サイズも大きくて場所もとるうえ、排熱のことも考える必要があるため、設置には工夫が必要です。毎日一定の間隔での給排水や、フロンの点検などを行う煩わしさも発生します。また、倉庫全体を冷やすことはできないため、あくまで「スポット」的な利用に限られます。
大型扇風機・シーリングファン
スポットクーラーほどの効果はありませんが、安価で場所も取らず、排熱も気にしなくてよいのが大型扇風機の特徴です。ただ、軽量物や精密部品、衛生に気を遣う商品を扱う倉庫では設置が難しい場合があります。
シーリングファンとは、天井付近に取り付ける扇風機のことです。直接風を送り涼しくするというよりは、屋内全体の空気を循環させ、体感温度を下げる効果が期待できます。副次的な効果として結露発生の抑制、いやな臭いの軽減なども見られます。設置には高所作業車を必要とする工事が必要で、機械や設備設置後だと取付がやや大変です。
屋根用スプリンクラー
屋根が熱せられることが原因ならば、その屋根を冷やしてしまう発想から生まれたのが屋根用スプリンクラーです。屋根に水を撒くスプリンクラーを設置し、撒いた水の気化熱によって屋根の温度を下げます。自然な方法で、環境にやさしい解決策です。
かなり効果は期待できますが、工事がある程度の規模となるうえ、水道代がランニングコストとしてかかります。また、屋根材への負担は劣化につながる恐れもあります。
遮熱塗料や遮熱シート
同じく屋根に対策を施すものとして、遮熱効果のある塗料やシートなどがあります。 一定の効果は期待できるものの、定期的に張り替える必要があるうえ、工場の屋根の面積を考えるとかなりのコストになるのが懸念点です。
倉庫の暑さ対策は、根本原因を解決しよう
上記のような暑さ対策も有効ですが、いずれも応急処置的な面があったり、単体での対策では不十分なケースがあり、必ずしも根本的な解決とはいえません。構造面からも見直す余地があります。
そこでおすすめしたいのが膜構造の「テント倉庫」です。テント倉庫なら、材料の持つ特性により、夏でも倉庫内の気温の上昇を抑えることができます。
例えば白色の膜屋根は日射反射率が75%以上と高く、膜屋根で覆われた空間の温熱環境が良好になります。膜・金属・スレートの3種類の屋根材について、屋根下の体感温度(OT)を比較測定したところ、膜屋根は金属屋根に比べ1.5℃、スレート屋根に比べ3.5℃も体感温度が低いことが確認されました。
膜、金属、ストレート屋根の温度比較。膜屋根の暑さに対する効果が高いことが分かる
鉄骨の骨組みを利用した二重膜のテント倉庫は、保冷・保温倉庫としての実績もあり、庫内の温度管理も可能です。
合同酒精株式会社様 静岡県 倉庫(食品原料)
内装膜に断熱膜を採用することで、保冷・保温効果をさらに向上
さらに、温度だけでなく湿度対策もできるのも膜材を使ったテント倉庫の特徴です。
関連記事『中型倉庫の『湿気対策』に有効な手段とは』
また、屋根だけを膜材に換装することもできるため、簡単な工事で既存の建物でも効果を得ることができるようになります。
関連記事『中型倉庫の屋根を修理・張り替えするベストなタイミングとは』
風通しを良くするためのレイアウトを考えたり、換気扇や給気口などの設備も組み合わせたり、自由度が高いのがテント倉庫の良さです。
これからもどんどん暑くなり続ける日本の夏の倉庫や工場の環境改善策として、膜材のテント倉庫を検討されてはいかがでしょうか。
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