太陽工業コラム

冷蔵庫いらずの断熱シート │ 上から被せるだけで保冷環境を作る保冷シートの紹介

「輸送する製菓や乳製品、生鮮品などを、客先で1~3時間、低温維持したい。そこまで厳しい保冷性能は求めてないないのに、『内容物のサイズが都度変わる』という条件があるが故に、希望に合致した保冷資材が見つからない。」これは温度管理が必要な商品を扱うあなたにとってお悩みの一つだと思います。

近年は、多様化する消費者の嗜好に合わせ、売り手も多品種小ロット生産にシフトする傾向にあります。しかし、業務用の保冷資材の多くは、箱型タイプで、保冷性能や価格には注力していますが、「柔軟な対応力」や「使い勝手」などを重視したものが少ないように感じます。
そこでこのブログでは、「手軽に使えて、内容物のサイズに応じた柔軟な対応が出来る」保冷資材をお探しのお客様向けに『クーリングシート』というシートタイプの保冷資材を紹介致します。

クーリングシートとは製菓や牛乳など保冷が必要な内容物の輸送に役立つ断熱性能を持ったシートです。その見た目は銀色の毛布のようで、規格品のサイズは以下の3種類があります。

【クーリングシート規格サイズ】

  • 2.3m×2.3m
  • 2.3m×3.5m
  • 3.4m×4.5m

クーリングシートの一番の特徴は保冷したいもののうえから「被せるだけ」という手軽さにあります。

製菓や牛乳などの輸送業務では、小口配送時にバンなど商用車の荷台に乗せるケースがあります。クーリングシートはそのような冷蔵機能のない車でも、被せるだけで内容物の温度上昇を抑えられる作業負担の少ない温度管理ツールです。

1-1.クーリングシートの構成素材と断熱効果 

クーリングシートは大きく表面素材と内材により構成されており、それぞれの素材は以下のようになります。

  • 表面素材 :ポリエステルタフタ(アクリルコーティング)
  • 内材(断熱材) :ポリエステル綿(フィルムコーティング)

クーリングシートは保冷品輸送現場での運用を想定し、「使い易い」、「繰り返し使用できる」ことに重点を置いた保冷資材です。

表面素材

クーリングシートを実際に使用する場面は慌ただしい輸送現場です。特に要冷品輸送は秒単位で時間を争う、スピーディな現場ですので、それに見合った「強度」と「使い易さ」が重要になってきます。
そのため、クーリングシートは軽くて強靭なポリエステルタフタを使用しています。人手が少ない現場でも、手軽に被せられて、多少の摩擦や負荷では破れないため安心してお使い頂けます。

また、クーリングシートは室内だけでなく屋外でも使用も考えた作りになっています。
クーリングシートの実物写真を見ると、格子状に縫製されているような見た目です。しかしクーリングシートは防水性を考慮し、縫製のような縫い目の穴が無い超音波による加工を採用しています。
さらに、表面素材のポリエステルタフタの上からアクリルコーティングを施すことで、気密性・撥水性をさらに高める仕様になっております。

撥水性を高めることで、雨などでクーリングシート内の内容物に漏水することを防ぐことはもちろんですが、気密性を高めることは内容物を保冷するうえで非常に重要な要素です。

保冷による温度管理は

  1. 蓄冷材などの寒剤によるエネルギー量
  2. 断熱材の断熱性能
  3. 断熱材の気密性

この3つの要素の大小で変化します。
クーリングシートは内容物の上から被せるという用途上、「3.断熱材の気密性」を上げることは難しいですが、シート自体の気密性を高めることで極力冷気を逃がしにくい仕様にしております。

屋外での温度管理の大敵は「日光」です。いくら断熱性の高い表面素材を使用していても、黒色など直射日光の熱を吸収しやすい色では、その効果も半減します。クーリングシートはシートの色味にシルバーを採用しています。シルバーは日光を反射し、温度上昇しにい色味になります。

内材(断熱材)

断熱材には使い易さを重視した、軽くて柔らかいポリエステルの綿を採用しています。「軽さ」と「柔らかさ」を維持しながら断熱性能を高めることは非常に難しいのですが、空気の層が多いほど断熱性能が高くなることを活かし、クーリングシートは空間のある6層構造としています。

1-2.クーリングシートの性能

上記グラフをご覧ください。これは外気温32℃の条件下で重さ8kgの氷の溶ける時間を測定したものです。比較した条件は以下のようになります。

  1. クーリングシートでカバーした結果
  2. 他社同種保冷シートでカバーした結果
  3. 通常シートでカバーした結果
  4. 何もカバーせず

何もカバーをしなかった場合、氷はおよそ5時間30分で溶けきってしまいます。一方クーリングシートでカバーをした氷は5時間を経過しても約6.5g(-1.5kg)です。これを比較すると、

-1.5kg÷-8kg=0.18

となります。つまりクーリングシートでカバーするだけで、氷が溶けるスピードを8割近く遅らせることが出来たということです。

1-3.クーリングシートの主な用途

「1.クーリングシートとは?」でも書いたとおり、クーリングシートの一番の利点は「被せるだけ」という手軽さにあります。とにかく厳密な温度管理が必要な保冷品を扱われる方には「業務用保冷ボックス」をお勧めしますが、あなた以下のようなことを重視されるのであれば、クーリングシートはニーズにぴったりのツールとなります。

  1. 日々運ぶ内容物のサイズが変わる
  2. 保冷品輸送に掛ける時間を極力短くしたい
  3. 厳密な温度管理は求めていないが、一時保管など内容物の温度上昇を遅らせる必要がある

詳細については「2-1.使い勝手、対応力に優れたクーリングシート」で説明しますが、以下のような用途でクーリングシートは活用されています。

  • 牛乳の配送
  • 氷・ドライアイスの配送
  • 冷凍・冷蔵食品の配送
  • 冷たいビールの配送
  • 保冷庫の扉開閉時のカバーとして
  • ショーケースの省エネカバーとして
  • ライトバンでの保冷輸送

小口の配送などはもちろんですが、もともと保冷性能のあるものにクーリングシートを被せることでプラスアルファの保冷性能を加えることや、箱モノとは違いシート素材の特徴を活かし、保冷庫の冷気を遮断するカーテンに使われたりと幅広い用途で使われています。

2.クーリングシートと業務用保冷ボックスの違い

先ほどの章では、クーリングシートの概要について述べてきました。ここであなたが迷うところは「クーリングシートが業務用保冷ボックスのどちらを選べばよいのか」ということでしょう。結論からいいますと、それはあなたが何を一番に求めるのかで変わります。次の章からはクーリングシートと業務用保冷ボックスを比較し、それぞれの長所・短所を見ていきたいと思います。

2-1.対応力に優れたクーリングシート

クーリングシートと業務用保冷ボックスの一番の違いはその「形状」にあります。見た目にも明らかですが、

クーリングシートはいわゆる「平物」であるのに対し、業務用保冷ボックスは「箱物」です。この形状の違いが現場での運用方法に大きな影響を与えます。

業務用保冷ボックスの場合、箱のなかに保冷が必要な内容物を入れて、蓋を締めるという運用になります。ここでポイントになるのが、箱のサイズや形は発注段階で固定されてしまうということです。これは同時に、中に入れることの出来る容積も固定されてしまうということです。毎日中に入れる内容物の量や形が一定の場合はこれで問題ありませんが、日々変わる商品を扱われる方にとっては、保冷ボックスのサイズに合わない商品を輸送する場合、そのボックスは役に立たないロストになってしまいます。

逆に平物であるクーリングシートはシートを被せるだけの運用ですので、保冷が必要な内容物のサイズや形が変わっても、柔軟に対応することができます。保冷ボックスのように保冷する内容物のサイズに応じて、複数サイズをストックし、いつも使わない保冷ボックスが倉庫で眠っているという無駄を省くことができます。

2-2.クーリングシートは作業性が高い

業務用保冷ボックスは、その都度

「蓋を空ける→内容物を中に詰める→蓋を締める」

という作業があり、さらに、保冷ボックスの形に合わせ、内容物を隙間なく詰めるために作業する人は思考も働かせなければなりません。特に一度に複数個、保冷ボックスを使い配送する場合なら、かなりの工数になってしまいます。また繰り返し蓋を開け閉めすることで、蓋の気密性を補助するマジックテープやファスナーも劣化が進みます。

これに対し、クーリングシートは繰り返しになりますが、「被せるだけで保冷が出来る」という点で非常に作業性の高い保冷ツールです。

「内容物を置く→クーリングシートを被せる」

ただそれだけです。保冷する内容物の配置も深く考える必要はありませんし、開口部の劣化を気にする必要もありません。収納の際もクーリングシートは毛布を畳むような感覚で折りたたみ、収納ができるので手間も少なく保管場所もとりません。一方で保冷ボックスは折り畳み出来ないタイプだと保管に多くのスペースを必要とし、仮に折りたたみが出来るタイプであっても、折り畳み手間の少なさはクーリングシートには敵いません。

2-3.保冷のバリエーション、積載・輸送面がクーリングシートの弱点

気軽に使えて、作業性が高いクーリングシートですが、業務用保冷バッグ(ボックス)と比べて劣る点が以下のような用途です。

  1. 厳密な温度管理が求められる内容物の保冷
  2. 持運びが求められる内容物

2-3-1.厳密な温度管理が求められる内容物とは、

  • マイナス温度帯で管理する必要のある内容物
  • 長時間一定の保冷温度を保つ必要がある場合

などの用途を指します。

クーリングシートの断熱材は軽さ・柔らかさを重視しており、1、2時間の短時間、内容物の温度上昇を遅らせる目的では非常に便利ですが、マイナス温度帯の保冷や長時間一定温度を保つためにはこれより優れた断熱材を使用する必要があります。高い断熱性能を有する素材には発泡ポリスチレンフォームや真空断熱材などがあります。これらは家屋の壁などにも使われる非常に硬い断熱材で、業務用保冷ボックスではこのタイプのものがありますが、クーリングシートでは採用が難しい断熱材です。

断熱材以外にも保冷効果を高めるうえで非常に重要になる「密閉性」ですが、あらかじめ箱型に加工された業務用保冷ボックスに比べ保冷対象物に被せるだけのクーリングシートはこの点で非常に弱い商材です。

マイナス温度帯での保冷をお考えの方は併せてコールドチェーン物流が最適化‼︎真空断熱材を使用した高性能の業務用保冷ボックス(バッグ)」もご覧ください。

また、長時間一定温度を保つ目的であれば機械式の業務用保冷ボックス(クールカーゴ)が適しています。一般の業務用保冷ボックスはボックス内に蓄冷材を入れることで保冷温度を低く保ちますが、「蓄冷材の購入・使用で確認しておくべき事とは」にもあるように、蓄冷材は冷凍庫などであらかじめ冷やしておくことで熱エネルギーを溜めこむ寒剤です。保冷効果は時間の経過とともに弱まるため、長時間厳密に一定温度を保つことは難しいです。これに比べ、クールカーゴは電気により一定の冷気を庫内に送り出す「冷蔵・冷凍車」と同じ仕組みであるため、長時間一定温度を保つことが可能です。クールカーゴは据え置き式の冷蔵庫で採用されているコンプレッサー式とは異なる冷却システムを採用しているため、揺れにも強く、乗用車に乗せて輸送する場合でも安全に温度管理が可能です。
クールカーゴの詳細についてはブログ「クールカーゴの購入・使用で確認しておくべき事とは」をご覧ください。

2-3-2.持運びが求められる内容物

複数の配送先ごとに保冷品を小分けして、トラック輸送する場合などはトラックの駐車場所から配送先まで持ち運ぶ必要があります。こういった用途の場合クーリングシートよりも取っ手があり、ボックスごとに小分けが可能な業務用保冷バッグ(ボックス)が便利です。持運びに便利なのはもちろんですが、発泡ポリスチレンフォームなど固い断熱材を使った業務用保冷バッグ(ボックス)なら、ボックスを重ねて積む、いわゆる「段積み」も可能なため、1台のトラックに詰める容積量も多く、輸送効率を高めることも可能です。

上記のような用途をお考えの方は「業務用保冷ボックスの改善事例」も併せてご覧ください。

3.クーリングシートを活用した運用例

これまでの内容でクーリングシートの基本性能と適した用途について、ご理解頂けたかと思います。この章では、実際にクーリングシートを活用した保冷品輸送についての事例を紹介していきます。

3-1.製菓の一時保管にクーリングシートを活用

【課題】

これは、とある大手シュークリーム店の事例です。こちらは、カスタードクリームを工場で製造し、シュー生地にクリームを入れる作業は各店舗で行うことで、効率的に鮮度の高いシュークリームを製造・販売してらっしゃいます。ここで課題となったのが、輸送後のカスタードクリームをすぐに冷蔵庫に入れることが出来ないということでした。店舗での製造工程上、カスタードクリームが到着してから約1時間は冷蔵庫に保管場所が確保できず、店舗内の常温スペースに仮置きせざるを得なかったのです。

工場から店舗までの輸送時間は1時間程度と短く、カスタードクリームを入れた容器に蓄冷材を乗せておけば、問題無く輸送出来ます。また、店舗は大型デパートなどに併設されているため、仮に冷蔵庫に入れられなくても、常時空調が効いた、直射日光を気にしなくて済む環境下で仮置きできます。「店舗内の常温スペースで約1時間、冷蔵庫内と同じような保冷環境を作ること」 これをクリアするためにクーリングシートが活用されました。

このお客様の状況とニーズをまとめると以下のようになります。

【お客様の状況とニーズ】

  • 希望する保冷温度と外気温の温度差は高くない(空調の聞いた室内での冷蔵品保管)
  • 短時間保冷(約1時間)

【解決策】

こちらは至ってシンプルです。

  • 工場から店舗への輸送
  • 店舗内での仮置き

この両段階で「クーリングシート+蓄冷材」による保冷を実施しました。 具体的には工場での出荷段階からカスタードクリームを入れた容器の上に蓄冷材を乗せ、その上からクーリングシートを被せて保冷します。そして店舗到着後の仮置き場面でも同様の保冷を行いました。
クーリングシートを被せる手間が増えただけですが、これにより蓄冷材の保冷時間が長くなり、店舗内仮置き時の保冷が可能になりました。 追加手間を最小化しながら、工場と店舗が連携するうえでの課題を解決する。クーリングシートの強みを活かした代表的な事例といえます。

3-2.発泡スチロール箱とクーリングシートのセットで保冷効果を高める

クーリングシートには他の保冷資材と組合わせ易いという特徴もあります。

既に発泡スチロールの箱による保冷輸送をされていれば、発泡スチロール箱の上からクーリングシートを被せて、保冷効果を高めることが出来ます。新規に更に保冷性能が高いボックスを買うとなると、コストも掛り、これまで使っていた箱の処分も困ります。ですがクーリングシートと併用すれば既存のボックスのまま、保冷輸送の時間を長くすることも可能です。

3-3.オーダーでクーリングシートを箱型以外の保冷カバーに加工

クーリングシートはオーダーメイドで加工することが出来ます。「酒樽の保冷効果を高めたい」というニーズを例に説明していきます。業務用保冷ボックスをオーダーメイドした場合、サイズを酒樽に近づけることは出来ますが、湾曲した酒樽の形状にぴったり合わせた加工は難しいです。素材の硬さゆえ、どうしても角ばった形状になってしまうからです。

ですがクーリングシートであれば、素材の柔らかさを活かし、酒樽の形状にぴったり合う保冷カバーに加工することも出来ます。それ以外にも、冷蔵・冷凍トラックの冷気を遮断するカーテンなど用途に応じて幅広く対応できることがクーリングシートの強みでもあります。

4.まとめ

以上、クーリングシートの素材詳細から用途、事例までを紹介してきました。繰り返しになりますが、クーリングシートの強みは

  • 使い勝手の良さ
  • 対応の柔軟さ

具体的な使用目的としては

  • 保冷品の温度上昇を抑える
  • 既存の保冷資材と組合わせて保冷効果を高める
  • 保冷したい物の形状に合わせたオーダー品を作る

などがあります。

逆に業務用保冷バッグ(ボックス)と比べたときの弱みは

  • 厳密な温度管理が難しい
  • 保冷品を入れたままの持運びに不向き

ということがあげられます。

このブログをご覧になってクーリングシートの良さが分かっても、業務用保冷ボックスとどっちを採用すればいいか決断するのは難しいかと思います。そんな時にまず考えて頂きたいポイントは

  1. 外気温
  2. クーリングシート内で維持したい温度
  3. 温度を維持する時間
  4. 必要となるスペース(~リットル等)

の4点です。こちらを押さえたうえで、あなたの望む理想の保冷輸送を考えてみてください。

>クーリングシートの製品詳細は、こちらから。
>業務用保冷ボックス(バッグ)・保冷シートの製品詳細は、こちらから。

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