太陽工業コラム

漏水を防ぎ環境と暮らしを支える薄くて丈夫な重要資材!土木現場の遮水シートについて徹底解説

土木現場で広く使用される膜材料として、「遮水シート」というものがあります。これは文字通り水を遮り漏水を防ぐ役割で、色々なところで使われています。身近なところでは農業用ため池など、他にも廃棄物の最終処分場のような、漏水が環境への重大な問題となるような施設でも、その耐久性と信頼性で、周囲の人々の暮らしを支えています。

本記事はそんな「遮水シート」の現場について、写真やイラストを交えて解説をいたします。

遮水シートについて

遮水シートとは

一言に遮水シートと言っても様々な種類があります。例えばゴムや合成樹脂、その2つをブレンドしたものや、アスファルトを用いたシート、天然鉱物を使ったものなど、水を通さないメカニズムから多岐にわたって存在しています。 今回は最も一般的に使用されている合成樹脂シートについて、その特性と現場の様子をご紹介します。

合成樹脂系遮水シートの仕組みと特性

ポリエチレンや軟質塩化ビニルなどでできたいわゆるプラスチック製の遮水シートのことを、合成樹脂系遮水シートと言います。土木用途では一般的に1.5mmの厚さのものが用いられ、特にポリエチレン系シートは、その優れた強度と耐薬品性から、有害物質の封じ込めなど、重要性の高い遮水構造で使われています。

例えば高密度ポリエチレンシートの引張強度は、350N/cm以上。10cm幅の短冊でグランドピアノをぶら下げることが出来るほどの強度を有しています。

「遮水」のポイントは  接合部

シートの遮水性の最大のポイントは、シート同士のつなぎ合せ、つまり接合部です。シートは一定の幅でロールとなって現場に搬入されます。工場生産品のシート同士を現場でいかに水密性をもって接合するか、遮水構造の勘所はここに集約されていると言っても過言ではありません。

遮水シートの弱点

優れた強度を有する遮水シートですが、気を付けないといけないことが二つあります。 ひとつは突起物です。合成樹脂系の遮水シートはボールペンのような突起がシートに押し当てられるような外力を苦手としています。そのため、多くの現場では遮水シートの上下に「保護マット」を敷設し、尖ったものが直接遮水シートに当たらないよう、保護を行っています。

二つ目は、紫外線です。合成樹脂つまりプラスチック製品の劣化の主要因は、紫外線と言われています。そのため、遮水シートが日光に直接暴露されないよう、遮光性のマットで覆ったり、コンクリートで保護を行うことが一般的です。また、日光に曝される場合は、特殊な加工を行い、遮光層を一体化した遮水シートが用いられることもあります。

遮水シートの現場を見てみよう

保護マットの敷設

先ほど上に書いた通り、遮水シートに敷設する地盤の突起物や凹凸が直接当たらないよう、シートの現場ではまず、地盤に保護マットを敷設します。

一般的に保護マットには、厚さ10mmのフェルト生地のものや、繊維を絡ませた不織布といわれるマットが用いられています。

遮水シートの固定

土木現場での遮水シートと保護マットの多くは、コンクリートや土による埋戻しにより固定されます。固定工と言われる溝を斜面の上の平場に堀りこみ、そこにシートやマットを敷設します。敷設後に固定工をコンクリートや土で埋めることで、重さと摩擦で滑り落ちないようにシートやマットを固定することが出来ます。

遮水シートの展張

保護マットの上に遮水シートを広げます。シートが風に吹かれて飛んでいかないよう、複数人で気を付けて、ロール状のシートを引き出していきます。大規模な工事では、展張用の機械が用いられる場合もあります。

施工の最重要ポイント!遮水シートの接合

遮水シート施工の最大のポイントと言える、シートの接合を行います。合成樹脂系の遮水シートは熱を加えると変形する「熱可塑性」という性質を持っています。専用の機械を用いて、隣り合う遮水シート同士を完全に一体化させていきます。 その接合方法は熱融着と言われますが熱融着には2つの方法があります。

自走式融着

自走式融着とは、左右のシートを挟み込む特殊な形状をした融着機により、重なり合った2枚のシートに圧力をかけながら、熱板をあてたり熱風を浴びせることで、シートを溶かし一体化する接合方法です。後述しますが、水密性検査の観点から、ダブルシームと言われる2列の溶着部が出来る融着機が多く使われています。

自走式融着のメリットは、温度管理と圧力による安定した接合品質です。2枚のシートのズレが少なく施工が出来るため、ほとんどの接合部は自走式融着により施工されます。

押出し溶接

押出し溶接は、自走式融着での接合が難しい狭い場所や複雑な箇所で行われる熱融着方法です。まずシート表面のゴミやホコリを落とした後、手動熱風融着機(250~400度の熱風が出るドライヤーのような機械)で仮止めします。そして、押出溶接機という機械で溶かし込んだ樹脂を仮止めの接合部に溶接していきます。遮水シートと同じ材質の樹脂で、肉盛りをするように溶接することで、狭く細かい場所でもしっかりとシート同士を接合することが出来ます。

接合部の水密性検査 加圧検査

さてこれでシート同士が接合されました。しかし、確実な水密性のためには確認が重要です。今回は「加圧検査」という検査方法をご紹介いたします。

先述した「ダブルシーム」の自走式融着機で接合した断面は、真ん中に空洞(検査孔)が出来るようになっています。加圧検査はこの検査孔を使った水密性の検査方法です。

まず、接合部の両端を留め具などで閉塞し、この空洞から空気が漏れないようにします。そして、専用の針状のノズルを検査孔に挿入し、そこから空気を送り込みます。一定の圧力まで空気圧が達したらノズルのバルブを締め、30秒待機。一定以上圧力が失われていなければ、空気が漏れていない=水漏れしない接合が出来ていることになります。 この時の空気圧や検査基準は、シートの種類により定められています。合成樹脂系の遮水シートの大きなメリットは、ダブルシームの熱融着ができることで、こうした客観的な指標による検査で水密性を確認できることにあります。

接合部の検査が完了し、上層の保護マットを敷設すれば、遮水シート工は概ね完了となります。

現場に合わせた最良の遮水構造とは ~漏水リスクを抑える~

以上の通り、遮水シートの現場をご紹介いたしましたが、最も安心の出来る、最も漏水リスクを抑えられるシート構造とは、一体どのようなものになるのでしょうか。 漏水リスクは、読んでいただいてお判りいただけたかと思いますが、どうしても手作業となる接合部に集中します。以下に漏水リスクを抑える方法について、いくつか例をあげました。

接合部を減らそう

漏水リスクを抑える一番簡単な方法として、接合延長を少なくするというアイデアがあります。例えば広幅で生成された遮水シートを使用することで、現場での接合は激減、施工品質の向上だけでなく工期短縮にも繋がります。

検査機能を持ったシートを使おう

上でご紹介した検査方法以外にも、シート自体に特殊な加工を施すことで、「スパーク検査」と呼ばれる電気を使った検査が可能なシートも存在します。検査方法の充実は、接合部の漏水リスクを抑えてくれるでしょう。

幅広いラインナップと経験で、最適な遮水工をご提案 太陽工業の遮水シート

上にあげている広幅生成の遮水シートや、検査機能付きシート、軟質塩化ビニルシートから高密度ポリエチレンシートやその他樹脂シートも含めた様々なラインナップを太陽工業では設計から施工までご提供しています。

規模や用途、予算など、その現場に応じた最適な遮水シートやその構造は様々な要素により変わってきます。例えばコンクリートの躯体への固定が必要なとき、例えば管の貫通部が出てきてしまうとき……。廃棄物最終処分場の国内トップクラスの実績で培った技術や経験と、専用のアプリケーションも交えた多彩なご提案で、よりご満足のいただける遮水構造を作り上げます。

まとめ

今回はその重要性の割には、あまり広く知られていない「遮水シート」について現場の様子も交えご紹介いたしました。漏水リスクを抑えたシート選定と施工を行うことで、水漏れによる補修などの大きなコストを避けることが出来ます。より現場に合わせた遮水シートを選ぶなら、まず太陽工業へ気軽に相談を!

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