太陽工業コラム
多くの建物では、吊り天井の構造を採用しています。 しかし東日本大震災以来、特に体育館などの大型施設においては、天井ボードの落下の危険があるなど、吊り天井の耐震性に不安の声が上げられるようになりました。 各所で改修の要望も多い吊り天井について、構造の説明と最新ソリューションの紹介をします。
吊り天井とは
天井の構造には大きく分けて「直天井」と「吊り天井」の2種類があります。 直天井が構造物の内部の上側を直接天井とするのに対し、吊り天井は構造物の天井裏にあたる部分から金属のボルトなどで格子状の枠組みを吊り下げ、その表面に石膏などの天井ボードを取り付けて仕上げたものを指します。
天井裏に空間ができるため、照明や空調、水回りなどの設備スペースを確保することができます。 体育館やホールなどの大型施設をはじめ、多くの建物の天井は、吊り天井です。
震災の際に天井ボードが落下するなどの被害が相次いだため、大型の施設の吊り天井については、2014年に政府が耐震性について新たな基準を設け、「特定天井」として一定の安全性が求められるようになりました。
吊り天井のメリットとデメリット
吊り天井には、次のようなメリットとデメリットがあります。 多くの施設で採用されている理由、同時に改修の要望が多い理由が分かります。
吊り天井のメリット
天井裏に空間ができることにより、次のようなメリットが生まれます。
遮音性能が高い
空間が構造物の振動をある程度やわらげることで、天井から階下へ向けた音は伝わりにくくなります。
逆に構造物内部から天井への音については、空間に防音・遮音・吸音材などを取り付けることによって、音の伝達を抑えることができるようになります。 特に体育館やホールなどの大きな音が発生する施設では必要な機能です。
電気、水道、空調などの設備スペースを確保できる
配線や配管などを、天井裏の空間に通すことできます。 見た目もすっきりするうえ、メンテナンスなども容易になります。
壁紙、クロスを貼る場合は長持ちする
直天井と比べて湿度などの影響を受けにくくなるため、壁紙やクロスで仕上げる場合にはきれいな状態が長持ちします。
吊り天井のデメリット
メリットも多い一方で、構造上、次のような懸念があります。
大型の施設においては耐震性に不安がある
構造物から枠組みをぶら下げる造りであるため、地震などの揺れに反応して天井そのものが揺れ、一定の箇所に負荷がかかることで破損や落下などの危険性があります。
特定天井に該当する場合、一定の基準を充たす必要がある
特に体育館など大型の施設の吊り天井は、政府の定める「特定天井」に該当する場合があり、一定の追加基準を充たした構造に改める必要があります。特定天井について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
『「特定天井」の基本を徹底解説、建築士が抑えるべきルートとは?!』
特定天井に該当する吊り天井を改修するとき、高い費用と労力をかけて基準を満たすことだけが選択肢ではありません。
体育館などの吊り天井の改修に、太陽工業は膜天井を提案します。
吊り天井の改修に「膜天井」という選択肢
改修の要望の多い吊り天井において、そのメリットを活かしたまま耐震性などをしっかりと確保するソリューションがあります。「膜天井」です。
膜天井は、吊り天井のようなメリットを持ちながら吊り材が不要であり、なにより大空間であっても特定天井に該当しません。高い安全性を確保することができます。 軽い・柔らかい・強いを特徴とし、室面積や天井高さに制限されることなく高い意匠性で大空間をデザインすることが可能です。
膜天井の特徴
膜天井の特徴を詳しくご紹介します。
軽い:落下しても被害が少ない
膜材料の質量は、わずか約600g/m²です。
従来の天井材に比べて軽量で、万一の落下時にも室内の人々や物品に与えるダメージを最小限にとどめることができます。
柔らかい:変形や衝突に強く、揺れにくい、落ちにくい
薄く柔らかな膜材料によって、天井が大きな揺れにも変形追従が可能な構造となり、落下の危険性は極めて低くなります。
さらに、高い柔軟性によって室内の意匠性も大幅に高めることができます。
実証実験にて、ボール衝突によって破損がないことを確認
※関連記事『膜天井にボールが衝突した場合の検証』
強い:落下物を受け止める
厚さわずか1mmの極めて薄い素材ながらも、落下物を受け止める強度があります。体育館等、特に面積が広く天井が高い大型の建築には、耐震安全性の高い膜天井が注目されています。
膜天井について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
『膜天井とは:安全で快適。意匠性に富み、環境にも優しい、これからの天井です。』