太陽工業コラム
天井には材質や工法によって様々な種類があり、それぞれに異なる機能性や適切な利用シーンがあります。
その中で、オフィスのように規模が大きく、機能も多く求められるような施設でよく採用されているのが、軽量システム天井です
軽量システム天井のメリット・デメリットや、注意点などについて確認します。
軽量システム天井とは
まず「システム天井」とは、主に吊り天井の一種であり、天井裏に設置される空調や照明などの設備を天井ボード材と一体にして組み、下地・枠に組み込むようにしてセットする天井のことです。
一般的な天井の場合は、下地・枠に天井ボード材を取り付けて仕上げた後に切り込みを入れるようにして設備をセットしますので、これに比べてシステム天井は「施工が容易」、「機能性に優れる」、「メンテナンスしやすい」という特徴があります。
下地・枠が同一直線方向に平行して走る「ライン型」と、縦横の格子状に走る「グリッド型」があります。
そしてシステム天井の中でも、耐震性を考慮して軽量化したものを「軽量システム天井」と呼びます。
システム天井のメリット/デメリット
システム天井がよくオフィスなどで採用されているのは、オフィスに求められる機能とマッチしているためです。システム天井の適性を理解するために、メリット・デメリットの双方を確認します。
メリット
メンテナンス性に優れるのが最大の特徴で、天井裏の設備の移設が容易でレイアウト変更に柔軟に対応できたり、天井ボード材や照明器具などを部分的に交換したりすることができます。直線的に配置されるので見た目も機能的な印象を与えます。
デメリット
使用できる材質の特性やサイズの影響で、吸音性・防音性能が他の天井に比べて劣るといわれています
また、地震の揺れに対して弱く、軽量化されたシステム天井であっても、天井パネルの落下の危険性があります。特に照明や空調口などの天井設備機器を一体化させた”ライン型”の構造ではこの危険性が増します。
天井の耐震性について
システム天井に限らず、一般的に吊り天井は地震の揺れに弱い構造をしています。
特にオフィスや体育館など、天井の面積が大きい施設の吊り天井は、東日本大震災のときに天井落下事故が相次ぎ、大きな被害が出てしまいました。
これを受けて、2014年に政府は吊り天井の耐震性について新たな基準を設け、特定の条件に当てはまるものを「特定天井」として定め、それに対し一定の安全性が求めるようになりました。
新築・既存を問わず、特定天井に該当する天井は設計を見直したり、改修したりする必要があります。特定天井の条件や改修方法など、詳しくは以下の記事を参照してください。
『「特定天井」の基本を徹底解説、建築士が抑えるべきルートとは?!』
特定天井の設計の見直しや改修については「天井を軽くする」、「補強により落下の危険性を低減させる」というアプローチがあります。補強を選択する場合は、かえって危険性が増しているという見方もありますので注意が必要です。万が一、天井が脱落した際には補強材の分の重量が増しているためです。
天井の軽量化を検討する際も、ただ軽くするだけではなく、万一の落下時にも被害を最小限に抑えることができ、さらに天井材以外の建築物の破損による落下物も受け止められる構造を考える必要があります。
これを実現する天井の構造に、「膜天井」があります。
システム天井の耐震性向上に、「膜天井」というソリューション
「膜天井」は、大空間であっても特定天井に該当せず、高い安全性を持つ天井構造です。軽い・柔らかい・強い、という特徴を持っており、吊り材が不要で、室面積や天井高さに制限されることなく大空間をデザインすることができます。
機能性を犠牲にすることなく軽量化を実現し、さらにシステム天井の苦手とする吸音・防音の面でも高い効果を発揮するのが膜天井です。
意匠性も高く、近年オフィスでの採用にも注目が集まっています。
膜天井について詳しくは、こちらのページをご覧ください。