太陽工業コラム
「法面」とは切土または盛土によってつくられた人工的傾斜面のことです。山がちで雨の多い日本において常に不安定かつ脆弱性を持ちます。
法面は崩壊リスクと隣り合わせで、その表面の浸食や、崩壊を抑止するために法面の保護工事や補強工事が必要です。しかし、その工法はそれぞれ一長一短があります。
今回はさまざまな法面保護工事の施工方法と、新しい解決策についてご紹介します。
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法面保護工とは
「法面保護工」とは、盛土、切土法面の浸食や風化を防ぐための工法です。例えば、植物や構造物で法面を被覆して安定性を図ります。
具体的な工法としては、
• 張り芝・種子吹付などによる植生工やモルタル吹付工
• コンクリートの格子を構築するフリーフレーム工
• ブロック積み工
• 張石工
などが存在します。
これらは人工的傾斜面の脆弱性を補い、落石や崩壊を予防するものです。
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法面保護工の施工方法
法面保護工は以下の2種に分類されます。
①植生を用いる「植生工」
②コンクリート等の構造物を用いる「構造物工」
①植生工
法面に植物の種をまく、もしくは苗木を植えて植物を繁茂させて、表層部の保護を図ります。植物は生育して法面を覆い、雨水による法面の浸食を防ぎます。風化も抑制します。また植物の根が土をしっかりと保持して土砂崩れを防ぐ効果も期待できます。
自然環境や景観の保全、温暖化対策としても有効とされ、他の工法と組み合わせて用いられる事も多いです。
植生工には種子を用いて植生をはかる「播種工」、すでに生育している芝や樹木などの植物を用いる「植栽工」、苗木の植栽と種子吹付を組み合わせた「苗木設置吹付工」などの種類があります。地質や景観、施工時期、周辺環境など様々な観点から、適した緑化方法が選定されます。
②構造物工
法面保護を行う地山が土砂や軟岩の場合は風化の影響を受けやすく、構造物による法面保護工が行われます。「構造物工」とは、板柵、籠、コンクリートなどを用いて法面の強化をはかる工法です。
構造物工は法面表面の浸食や風化への対策だけではありません。法面(すべり)の深い箇所での崩壊や崩落へ対策が求められる場合は、アンカーや杭などが地山に挿入されますが、これらも構造物工に含まれます。
アンカーや杭などを地山に挿入
板柵は法面に垂直に打ち付けられ、土砂の流出を抑止します。また植生工と組み合わせる場合は、板柵と板柵の間には植物が植え付けられます。また、「かご工」では“じゃかご”や“ふとんかご”と呼ばれる専用の籠を法面や法尻に設置します。じゃかごは主に多量の湧水や表流水がある法面への侵食防止用に、ふとんかごは災害復旧の土留め目的としても広く使用されています。土留めとは、土が崩れるのを防ぐ仮設構造物のことです。かごの中には自然石が詰められるため、景観を圧迫しないこともかご工の特徴です。
ふとんかごの例
コンクリートによる法面の被覆は、その施工方法から大きく三つに分けることが出来ます。すなわち、「現場打ちコンクリート」と「モルタルコンクリート吹付」、「プレキャストコンクリート」です。
現場打ちコンクリートとは、その名の通りコンクリートを現場で打設することを指します。生コン工場のプラントで配合された生コンクリートをコンクリートミキサー車が現場まで運び、コンクリートポンプ車などで圧送、現場に設置した型枠内にコンクリートを流し込みます。
コンクリート打設後は適切な養生を行った後に型枠を取り外します。主に擁壁や法枠などの構造物の構築に用いられます。擁壁とは崖や盛土の側面が崩れ落ちるのを防ぐために壁のことで、法枠とはモルタル・コンクリートを造成する際の格子状の枠です。斜面の安定を図ります。
法枠のイメージ
モルタルコンクリート吹付とは、吹付機を用いて、モルタルコンクリートを圧縮空気によって吹き付ける工法のことをいいます。一般的な施工手順として、清掃後の法面にラス網と呼ばれる菱形金網を固定した上で吹付が行われますが、これはコンクリートの亀裂や剥離の防止を目的としています。吹付されるモルタルコンクリートは現場に設けられたプラントヤードで配合され、デリバリーホースを通り法面まで圧送されます。法面全面の被覆や法枠、水路など幅広い用途で用いられています。
プレキャストコンクリートとは、工場であらかじめ製造されたコンクリートを指しています。二次製品のため品質が均一であるほか、コンクリートの硬化養生や、型枠の組み立て脱型の作業を現場で行う必要がないため、工期の短縮が図れるなどのメリットがあります。プレキャストコンクリートは主にコンクリートブロックや法枠ブロックとして用いられ、設置や運搬にはクレーンやバックホウなどが使用されます。
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新しい法面工事
近年、国土交通省は建設業の生産性促進を目指し、i-Construction化を強力に推進することを打ち出しました。この動きは法面作業も無縁ではなく、現場でのICT活用が既に始まっています。
具体例として、3Dレーザースキャナーの活用による3次元データ構築が行われています。3次元データは掘削土量の算出や梁長の計測、法面吹付面積の出来形管理などに利用されています。法面工事も近年の技術発展と共に日進月歩で進化しており、ICTのような施工法だけでなく、用材面でも幅広い視野を持つことが重要となってくるでしょう。
そしてこれからご紹介する「コンクリートキャンバス」は、コンクリートによる法面の被覆工事として全く新しい特徴を備えており、既に全国47都道府県で採用実績があるなど近年着実に注目されつつある工法です。
法面保護に効果的なコンクリートキャンバスとは
「コンクリートキャンバス」は水分を加えれば硬化するコンクリートとキャンバス(布地)の複合材料です。特長としては「のり面崩壊を防ぐための具体的な対策とは」でもご説明してありますが、施工性、耐久性、柔軟性が挙げられ、現場打ちコンクリートとモルタルコンクリート吹付、プレキャストコンクリートの利点を兼ねそろえた製品です。
コンクリートキャンバスでの法面保護工事
施工性
コンクリートキャンバスは1本で約70kg程度の重量です。現場での裁断も自在に行えるため、重機が入らないようなエリアでも人力で運搬・設置が可能です。そのため、プラントの設置や重機確保のための手間がなくなり、コストも削減されます。
また、コンクリートキャンバスの施工に用いるのは材料と、固定/接合のためのピンとビス、そして水のみです。コンクリート面の構築に必要な作業は敷設と散水のみで、吹付工や型枠工といった特殊な技能を必要としません。
耐久性
一般的な無筋コンクリートの圧縮強度で18N/mm2、モルタルコンクリート吹付では15N/mm2が強度の目安とされています。一方、コンクリートキャンバスには、水和反応後の圧縮試験で40MPa(40N/mm2)以上の強度を示すセメントが使用されています。
また、コンクリートキャンバスは、英国規格の耐候性試験において、少なくとも50年の屋外環境に対応できることが確認されております。
柔軟性
コンクリートキャンバスは硬化が始まるまでは布地の性質をもっており、複雑な形状の地盤にも柔軟に追従します。また、カッターナイフでの切断が可能なため現場に合わせた細かな調整が可能で、整地された法面のみならず、凹凸のある箇所や、災害箇所の緊急的なコンクリート被覆でも自在な対応が可能です。その柔軟性をいかし、排水路の補強など様々な用途でもご採用をいただいております。
凹凸に柔軟に追随するコンクリートキャンバス
まとめ
法面工事の新機軸「コンクリートキャンバス」は、コンクリート面構築による法面保護工を革新する材料です。
現場打ちコンクリートではミキサー車とポンプ車が必要です。モルタルコンクリート吹付ではプラントヤードが、プレキャストコンクリートではクレーンなどが必要となりますが、コンクリートキャンバスの登場により、これらの重機類がなくても施工が完了できるようになりました。
また、型枠工や吹付工のような特殊技能者がいなくても、法面をコンクリートで被覆することができます。
さらにコンクリートキャンバスは二次製品のため品質が均質です。施工者によって表面の仕上がりが違うことがありません。また、柔軟なシートとして敷設ができるためモルタルコンクリート吹付のように法面形状にも良く馴染みます。
手軽に利用でき、低コスト、またその耐久性によって施工後の保守費用も抑えてくれます。既に地方公共団体をはじめとした様々な導入事例がありますので、ぜひ弊社の公式ホームページをご覧ください。