太陽工業コラム
毎年のように大規模な自然災害のニュースが報じられる日本では、緊急医療に対する意識や必要性は年々強まってきています。
医療団体を中心に、災害現場での緊急医療の拠点としてテントを検討している方が多くいらっしゃいます。また、災害時以外の感染症などの発生時にも、臨時拠点としてテントが必要になる場面があります。
本記事では、医療用テントにはどんな機能が必要で、結果的にどんなテントが適しているかを紹介していきます。
医療用のテントに求められる機能
医療用テントは、災害現場での救護・緊急医療処置のスペースとして使用されます。感染症の流行時などには除染の臨時拠点として設ける仮設のテントが該当します。
現場で利用される場面から、医療用のテントには下記のような機能が求められます
平時はコンパクトに収納しておける
臨時の医療拠点が必要なほどの事態はそう頻繁に生じるものではなく、理想的には全く発生しないことが望まれます。医療用のテントは使用時の利便性と同じくらい、収納に関して高い機能性が求められるといえるでしょう。
平時には場所をとらず、使用時にはすぐに取り出せるような、コンパクトな収納性を備えている必要があります。
簡単に持ち運びができる
医療現場等に臨時に設営するテントとしては、下記画像のような従来型の蛇腹式パイプテントなどがイメージされがちです。ところがこれは持ち運びぶだけでも大人数が必要であり、設置も困難であるために緊急対応に最適とは言い難い仕様です。
医療用テントを検討するのであれば、一式につき2名程度でで容易に持ち運べる軽量さと、コンパクトさを求めましょう。
誰にでも簡単に扱うことができる
非常事態に使用する設備は、特定の技能や経験を持つ人員のみが対応できるものでは、万一には適切に利用できないことが想定されます。緊急時の限られた人員の中から、誰でもが簡単に扱える必要があります。
設営方法が複雑であったり、重量が重かったりするなど、慣れた人でないと設営が難しいものは好ましくありません。
少人数で設置できる
緊急時にはどれだけの人がすぐに動けるか分からないことを考えると、持ち運び時だけでなく、設営に関しても少人数で対応できる機能が求められます。
本来の目的である医療行為等に可能な限りのリソースを投下するためにも、テントの設営はわずかな人数で完了できる必要があります。
短時間で設置できる
上記のように安全性の高いものであっても、万一の事態には備える必要があります。メンテナンスが容易なものを選ぶようにしましょう。緊急時に業者が工場に持ち帰らないと修理できないようなものでは、災害現場で用いることはできません。
トリアージへの対応ができる
大事故・災害などで多数の患者が出た際、手当ての緊急度に従って優先順をつけることをトリアージと言います。災害医療等の現場ではトリアージを行う場所として「トリアージポスト」が必要になります。
多くは病院の駐車場などでテントを設置しますが、スペースを確保するだけでなく、患者の優先順位に応じてテント色を分けて管理しやすくすることが求められます。
感染拡大などを防ぐことができる
予測が難しい感染症のパンデミックなどでは、院内感染などの二次被害を防ぐためテントを用いて対象者を隔離する場合があります。その際、極力空気が外部に漏れないようにして感染拡大を防ぐ機能が、医療用テントには要求されます。
シャワー室などの設備を付けられる
医療現場では、感染症防止など様々な目的でシャワーや他の設備が必要になります。これらの設備もテント内部に保有できる拡張性が、医療用テントには求められます。
安全性が高い
様々な非常事態が想定される現場で使用されるテントにおいては、破損や、火災など二次災害を防ぐためにも、安全性にも配慮した機能を備えている必要があります。できるだけ丈夫で、耐火性の高い素材を用いたテントを選ばなければなりません。
目立つ・遠くからでも役割が分かる
非常事態の現場は混乱が予想される他、複数の臨時施設やテントが並び建つことが考えられます。誰もが目的とする設備に迷わず辿り着けるよう色や文字などデザイン面で目立つようにして、テントの役割がすぐに分かるようにしておくことが必要です。
簡単に撤収できる
医療用テントは臨時に設置するものですから、撤収時もなるべく速やかに対応できるものが望ましいでしょう。
医療用のテントには「エアーテント」が最適
ここまで、医療用テントに求められる機能を整理してきました。これらの機能を満たすのに従来のパイプテントでは難しいと考えられます。
医療用テントの最適解として「エアーテント」をご紹介します。
エアーテントとは?
エアーテントとは、従来のパイプなどの骨組みではなく空気で膨らませて形成する、機能と利便性を高めたタイプのテントです。緊急・災害時に素早く簡単に設営でき、機能も充実しているため、医療用テントに最適です。
太陽工業株式会社の災害・緊急用エアテント「マク・クイックシェルター」を例に、仕組みや機能をご紹介していきます。
コンパクトに収納できる
エアーテントは骨組みがなく全て布地のため非常に軽量で、コンパクトに収納できます。
エアーテントであれば場所をとらず、畳んだテントの上にスペースを確保できるので、他の備品も多く収納できるようになります。また取り出しに困ることもありません。
一般的に病院には防災用倉庫は少ないためコンパクトなエアーテントは最適です。
軽量で持ち運びも簡単
医療用のテントは、持ち運びのしやすさも重要です。エアーテントであれば、下の写真のようにわずか2人で運ぶことができます。乗用車にも積載できるサイズのため極めて容易に運ぶことができます。
また、「マク・クイックシェルター」は他社のエアーテントと比べて畳みやすく、気柱部分が少ないため重量も大幅に軽減されています。気柱とは空気を入れてテントを支える部分のことです。さらに生地もゴムではなく繊維のため、よりいっそう軽量に仕上がっています。
実例として、埼玉県では疾病対策課の主導によって熊谷ドームに防災基地を併設しており、こちらに「マク・クイックシェルター」が導入されています。
県内の各病院に保管場所がなく、テントの設置が必要な際にはこの基地より各施設に運搬される運用を取っています。運搬に適した軽量なエアーテントが選ばれました。
拡げて空気を入れるだけで設置完了
エアーテントは組み立て・設置もとても簡単で、力作業に自信のない女性でも問題なく対応可能です。
従来のパイプテントでは、骨組みや布地の取り付けが複雑だったり、フレーム式のテントは重さもあったりするため設置が非常に大変です。一方、エアーテントであれば空気を入れるだけで組み立てられるため、設営箇所に運んだ後は、誰にでもすぐに設営することができます。
大人2人で設置できる
持ち運び同様に、エアーテントは設営も大人2人いれば十分に対応できます。下の写真のように空気で膨らむのを待つだけなので、両端を支える人員だけで設営ができてしまいます。
パイプテントが一般的に4人必要といわれている中、半分の人員で済むということは、緊急時には倍の効率で設営が進むことを意味します。
最短約3分で設置可能
組み立てが簡単で人手もかからないだけでなく、時間もかからないのがエアーテントの特徴です。作業時間のイメージは下記のとおり、最短約3分で完了します。
- 1.生地の展開(1~2分)
- 2.ロッドの取り付け(1~2分)
- 3.空気の充填(1~3分)※手動でも可能
空気の充填が手動でも可能なため、空気を入れるポンプの電源(発電機)が用意できない場合にも対応が可能です。もしくは設置場所から電源までが遠い場合にも有効です。手動では多少作業時間がかかりますが、一般男性であれば約10分で対応できます。
陰圧フィルターシステムで外部へのウイルス飛散を防止
予測が難しい感染症などのパンデミックに即座に対応できるテントとして「医療用陰圧エアテント」というものがあります。
専用の装置が備え付けられていますが、軽量でコンパクトなため医療従事者の方々も容易に設置が可能です。医療用テントに陰圧フィルターシステムを接続することで、テント内部の気圧を外部より下げ、診療を受ける患者が持ち込んだウィルスなどが外部へ拡散するのを防ぎます。
また、空気の流れを作ることによって、診療を行なう医療従事者が感染しにくい環境も作り出せます。
医療用テントと陰圧フィルターシステム
テント内部の気圧を下げ、ウィルスなどが外部へ拡散するのを防ぐ仕組み
コインシャワーやエアコンなどの豊富な拡張性
「マク・クイックシェルター」は、用途に合わせてシャワーやエアコンなどの設備を設置できる拡張性が特徴です。
シャワーは水道から直接水を引いてくるタイプのため、タンク式よりも高い利便性を発揮します。
エアコンに関しては、室内機と室外機が一体型のユニットタイプを採用しており、キャスターも付いているので移動、設置も容易です。
発電機タイプと蓄電池タイプの2種類があり、一定の音が発生する発電機タイプの使用が好ましく無い場所では、より静かな蓄電池タイプの設置が最適です。
また、冷暖房兼用のため、季節を選ばず使用できるのも特徴です。
防火素材使用で火災に強く、強風にも耐えられる
テント素材に防火素材「ウルトラマックス」を使用しており、延焼しにくい、火災に強い設計です。形状安定性にも優れ、強風時にも安心して使用できます。
独立気柱と二重チューブ構造により、現場で修理ができる
一般的なエアーテントでは、気柱部分が全て繋がっているため、一箇所に穴が開くと空気が漏れて全体が崩れてしまいますが、マク・クイックシェルターは一箇所の穴による完全倒壊の心配がありません。気柱がそれぞれ独立しているためです。
マク・クイックシェルターは一箇所の穴による完全倒壊の心配がない
マク・クイックシェルターの構成としては、複数の独立した縦材「エアビーム(二重チューブ式)」と、それに直交する横つなぎ材「連結式FRPロッド」により構成されています。
気柱の各チューブは外側のアウターチューブと内側のインナーチューブの二重構造から成っています。インナーチューブが高い機密性を保つと同時に、アウターチューブは損傷を内側に達するのを防ぐことができます。さらに、万が一インナーチューブまで破損が到達した場合でも、現場で交換作業を行えるようになっているため、テント全体を交換したりすることなく復旧させることができます。
豊富なオプションで「テントの目的」がすぐ分かる
マク・クイックシェルターはテントのカラーリング指定や、団体名などの任意の文字を妻面、側面に入れることが出来ます。
また、マジックテープ付きのシートで「救護所」「災害対策本部」など、エアテントの用途を記載した表示布を付け替えることができます。シチュエーションに応じ、対外的にテントの機能を発信することが可能です。
マジックテープ付きのシート
実際の現場では、混乱を避けるためテント生地は現場全体で統一色とする場合が多いのですが、エアーテント毎の役割が分かりづらい面もあります。シートの文字や布地の色分けで役割を臨機応変に示すことは、現場での運用をスムーズに進めるために有効です。
その他の例としては、下の写真のようにエアー気柱部分のみを色分けしているケースもあります。
約5分で撤収
エアーテントは設営時と同様に、撤収も簡単かつ素早く行えます。排気もボタンを押すだけで勝手に空気が抜けていく仕様ですので、人の手で圧力をかけずに待っているだけで済みます。(浮き輪のように、力を入れて空気を押し出す必要がありません)
概ね5分ほどで、撤収は完了します。
従来のエアーテントでは気柱と膜屋根が独立しているため、排気完了時に形が崩れ、折り畳む前に整形する手間が発生するので注意が必要です。
一方、マク・クイックシェルターでは空気が排気されても、自然と膨らませる前の状態に収まります。そのため、すぐに折り畳んで撤収でき、撤収に要する時間は従来のエアーテントに比べておよそ半分になります。病院での訓練時でも効率的な実施が可能になります。
医療用エアーテントの導入事例
緊急対策用の医療拠点で実際にエアーテントを導入している現場をご紹介します。
空港内での緊急医療トリアージ用
空港内での緊急対策を目的とした専用品です。大型でありながら、機動性を高めるために、特殊な膜材を用い、大幅な軽量化を図っています。
新型インフルエンザ対策用
新型インフルエンザ対策を目的とした専用品です。前室と本体の2つのエアーテントで構成され、本体側は陰圧フィルターシステムにより内部空間を陰圧にし、ウイルスなどの飛散を防ぎます。本体テントは断熱性を考慮し2重膜構造とするケースもあります。
エアーテントの設営~撤収を動画で観てみる
実際に、エアーテントの設営から撤収の手順を説明している動画がありますのでご紹介します。
(出典:太陽工業株式会社 災害・緊急用エアテント「マク・クイックシェルター」)
まとめ
ここまでご紹介してきたように、マク・クイックシェルターには圧倒的な機能性・利便性があります。緊急医療現場用テントを検討されている場合は、ぜひマク・クイックシェルターをチェックしてみてください。