太陽工業コラム
主に道路法面工事などを行う際に、切土により落石や飛石が発生した際、落石から”車両”や”歩行者”を防護する目的で設置する仮設の落石防護柵。 ゼネコンや建設コンサルタント、各自治体の関係者などの方々は、耳にされたことがあるかと思いますが「詳しく知らない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、仮設防護柵を扱ったり、今後利用の検討をされる方々に向けて、仮設防護柵の基本について解説します。また、従来の工法に比べて利点の多い仮設防護柵の新工法である「MWG工法」についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
MWG工法についてはこちら
仮設防護柵とは
そもそも仮設防護柵とはどういったものなのでしょうか。多くは工事期間中の落石事故を未然に防止する、文字通り仮設の落石防護柵を指します。供用中の道路の安全確保のために用いられる設備です。
現在では様々なメーカーより仮設防護柵は販売されており、用途はどれも同じながらも素材やコスト、細かな工法などに違いが見られます。
仮設防護柵を必要とする工事
工事において仮設防護柵を必要とするケースは、その多くが道路沿いの法面工事で切土を伴う工事です。特に山間部などは道幅が狭く、道路工事を行う際、道路沿いの斜面を一部掘削することも要求されます。このような工事では、交通車両や歩行者の安全確保を目的として仮設の落石防護柵が用いられます。
仮設防護柵が無いと落石が発生した際、通行車両や歩行者に思わぬ事故や被害を招く恐れがあるため、仮設防護柵は切土などを伴う道路工事では、とても重要な設備です。
従来の仮設防護柵工法における課題
仮設の落石防護柵は様々なメーカーから販売されていますが、構造や設置方法に違いはあれど従来工法には避けられない課題があります。仮設防護柵を設置する場合には、それらの課題について理解しておきましょう。
主な課題は以下のとおりです。
- 舗装面の掘削や支柱打設などの付帯工事が必要
- 搬入や設置工事に大型重機が必要
- 路面復旧などの付帯的な工事の負担が大きい
- 現場環境によって通行止めを必要とする場合がある
- 騒音や振動が発生する
舗装面の掘削や支柱打設などの付帯工事が必要
従来工法では支柱を設置するため、道路地盤へのH形鋼などを打設する必要があります。また地盤が硬い場所では、コンクリートを基盤とするケースもあります。このように従来工法の場合、どうしても大きな付帯工事が発生してしまいます。
搬入や設置工事に大型重機が必要
従来の仮設防護柵は、設置時の搬入や工事に大型車両や大型重機を必要とすることが少なくありません。大型重機を手配する手間やコストもかかり、また、山間部などの狭い道路では大型重機を現地に運ぶこと自体が困難な事もあります。
路面復旧などの付帯的な工事の負担が大きい
防護柵の支柱を自立させるため、杭を道路基盤に打設(あるいはコンクリート基盤)するため、工事完了後には地盤ならびに路面の復旧が必要となります。メインの工事の前後にも付帯する工事が発生するため、工期が長くなってしまいます。
現場環境によって通行止めを必要とする場合がある
仮設防護柵を必要とする現場は、その多くが山間部などの道路です。中には非常に狭小な道路も存在します。場合によっては、資材や重機でスペースを埋めてしまい、完全に通行止めをしなければならないこともあります。
騒音や振動が発生する
従来工法は杭打ちが必要なため、地下埋設物や地盤の掘削を行います。その際に、大きな騒音や振動がどうしても発生してしまいます。あくまでもメインの工事に付帯する仮設防護柵の工事なので、可能な限り環境負荷は抑えたいところでしょう。
理想的な仮設防護柵に求められるもの
従来工法の仮設防護柵について、避けられない課題があることをご説明しました。 これらのデメリットを整理することで、理想的な仮設防護柵とはどういったものか、ということが見えてきます。従来工法と比して、理想的な仮設防護柵に求められる特徴は、以下の点が挙げられます。
- 設置や撤去工事における手間や作業負荷が少ない
- 工期を短縮できる
- 周辺環境にも優しい
豊富なメリットをもつ新工法「MWG工法」
仮設防護柵に求められる要素を整理しました。そして、このようなより機能的な仮設防護柵 を希望される方にオススメできるものとして、「MWG工法」による仮設防護柵があります。MWG工法には、従来工法よりも豊富なメリットがあります。
ここからは、その特徴やメリットについてご紹介します。
MWG工法とは
MWGとは、Mesh Wall Gard(メッシュウォールガード)の略称です。 そして、MWG工法とは、連続箱型鋼製枠(メッシュウォール)を用いた工法を指します。メッシュウォール内に設置したベースプレートに支柱を固定し、枠内に土砂を投入することで支柱を自立させるため、基礎工に地盤の掘削を必要としない点が、従来の工法との違いで最大の特徴といえます。
MWG工法のメリット
MWG工法は、従来の工法と比べて以下のような優れたメリットを持っています。それぞれ細かくご説明します。
- 作業の簡略化・削減による工期の短縮
- 従来工法より低コスト
- 狭小道路でも対応可能な省スペース
- 騒音・振動が少ない
- 現地発生土を使える
作業の簡略化・削減による工期の短縮
MWG工法では、資材搬入や防護柵の設置に際して大型重機や車両、特殊作業を必要としません。また、事前の地下埋設物調査や架空線移設も不要です。さらに、地盤の掘削もしないため工事後の路面復旧も不要であり、従来に比べて多くの作業を削減・簡略化することができます。
そのため、総合的に工期を大幅に短縮することが可能です。従来比で、およそ最大75%ほどの短縮を見込めます。
従来工法より低コスト
仮設防護柵の要である鋼材に関して、MWG工法では使用量がきわめて少なくて済みます。これは、道路地盤への打設や自立するための支えを付ける必要がないことによるものです。また、地盤掘削や打設が無いため、前述したとおり大型重機や大型車両を使わず、付帯する工事も不要なことから、工事全体のコストを大幅に削減することが可能です。従来比でおよそ最大50%ほどのコスト削減を実現できるでしょう。
狭小道路でも対応可能な省スペース
メッシュウォールは折り畳めるため、搬入や保管時にも場所を取りません。そして、拡げた際にも、防護柵の高さによりますが基礎部の幅が1.0〜1.6mであることから、山間部などの狭小な道路においてもスムーズかつ省スペースで工事を行えます。大型車両や重機なども不要なので、車両などで道を塞いでしまうこともありません。
そのため、狭小な現場でも片側1車線を十分に確保可能で、完全通行止め対応もほとんど必要ありません。交通への負荷を最小限に抑えられることで、周辺への影響も少なく、理想的なメリットと言えるでしょう。
騒音・振動が少ない
防護柵設置に関して杭打機を使わずに敷設できるため、重機による騒音や振動を減少させることができます。周囲に住宅などが存在する現場では、近隣住民への配慮にも適した工法です。
現地発生土を使える
従来工法と違う特徴的な点として、MWG工法では支柱を支えるために現地発生土を使用します。これは、支柱の枠であるメッシュウォールの特殊な構造によって、中詰め材に現地発生土を使うことが可能な仕様によるものです。この仕様により、防護柵設置のための資材購入を削減し、現地発生土の有効活用にも繋がります。
MWG工法による仮設防護柵の施工方法
続いて、MWG工法での仮設防護柵の施工方法・手順を簡単にご説明します。
-
搬入
メッシュウォールは折り畳んで輸送・搬入可能、保管も省スペース。 -
ベースプレートの設置
支柱をセットするためのベースプレートを設置。ベースプレート同士を連結プレートにより接続することで、安定性を確保。 -
メッシュウォールの設置
連続箱型鋼製枠であるメッシュウォールを展開。展開作業は3,4人でスムーズに行うことが可能。 -
土砂の充填
ベースプレートに支柱を設置し、メッシュウォール内に土砂を充填。メッシュウォールが自立し、重機に近接せずに充填作業が可能。 -
矢板の差込
横継材を固定し木矢板を設置し、仮設防護柵の完成。作業後はメッシュウォールガードを解体し、土砂を撤去で完了。
MWG工法の活用事例
MWG工法はその利便性や機能性の高さから、実際に様々な現場で活用されています。最後に実際の活用事例の一部をご紹介しますので、参考にされると良いでしょう。
防災ダム施設の法面補修工事での活用
所在地 | 岩手県 |
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仕様 | 防護壁高さ3.0m、T-1.0 |
用途 | 仮設防護柵 |
規模 | 45m |
一般国道の法面補修工事での活用
所在地 | 岩手県 |
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仕様 | 防護壁高さ4.0m、T-1.3 |
用途 | 仮設防護柵 |
規模 | 90m |
災害防除工事での活用
所在地 | 長野県 |
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仕様 | 防護壁高さ4.0m、T-1.3 |
用途 | 仮設防護柵 |
規模 | 100m |
まとめ
山間での道路拡幅や補修工事などで必要となる仮設防護柵は、従来工法では本来の目的である工事以外での負担がどうしても発生してしまいます。このような付帯作業にかかる費用や工期を極力抑え、効率的に進めたいと考えている方も多くいらっしゃると思います。 今回ご紹介したMWG工法は従来工法の課題の多くを解決したもので、今後のスタンダードにもなり得る新工法です。
仮設防護柵を検討中やお調べの方向けに、さらに詳しい情報をMWG工法の公式ページに掲載しています。