太陽工業コラム
道路際の法面工事等の際、供用中の車道に落石が及ばないように行う、仮設防護柵の設置工事は、路面に穴を開けて鋼杭を打つ『親杭横矢板』が一般的です。
しかし、この従来の工法には以下のような課題があります。
- 搬入や工事に大型重機が必要
- 騒音や振動により周辺に環境負荷がかかる
- 狭小道路では両側通行止めの必要がある
- 地下埋設物調査・架空線移設・路面復旧などの付帯的な工事の負担が大きい
課題を解決して短工期・低コストを実現する新しい工法が、『MWG(メッシュウォールガード)工法』です。
【MWG工法の主な特徴】
- 杭打ちが不要なため、地下埋設物を損傷せず、騒音・振動などの環境負荷を小さくできる
- 支柱基礎工に現地発生土の使用が可能
- 設置箇所の道路を損傷しないため路面復旧が不要
MWG工法は、搬入・設置・撤去のコストや工期を大幅に削減します。
MWG工法の利点や特徴を、写真付きの事例を交えて詳しく紹介します。ゼネコン、建設コンサルタント、市区町村の関係者の方はぜひご覧ください。
MWG工法の概要
MWG工法は、連続箱型鋼製枠に支柱(H型鋼)を立てる仮設防護柵工です。
仮設防護柵は、道路拡幅や法面保護工時に発生する落石の飛散から”車両”や”歩行者”を防護する目的で設置されます。従来工法では、コンクリート基礎の構築やH型鋼杭を地盤へ挿入することで支柱を自立させ、柵を設置しています。
これに対し、MWG工法は『メッシュウォール』という連続箱型鋼製枠内に設置したベースプレートに支柱を固定し、枠内に土砂を投入することで支柱を自立させます。大型重機や特殊作業を必要としない簡単施工が可能で、道路幅が狭くても片側交互通行が可能です。路面の掘削や鋼杭挿入や路面復旧などの工事が一切不要であり、工期とコストを大きく抑えることが可能です。
従来工法の標準断面図
MWG工法の標準断面図
WG工法の設計は日本道路協会の定める基準に準拠しており、強度・安全性の面で従来工法と同等以上となっております。高さも3m~5mに対応しており、適用範囲は従来工法と同じです。
MWG工法の8つの特徴と強み
MWG工法は、大きく8つの強みを持っています。
- 工期が短い
- 低コスト
- 狭小道路にも対応
- 騒音・振動が少ない
- 現地発生土を使える
- 撤去が容易
- 事前調査が不要
- 架空線移設が不要
ひとつずつ説明します。
工期が短い
大型重機や特殊作業を必要としないこと、地下埋設物調査や路面復旧など付帯する工事が不要であることから、工期が大幅に短くなります。従来工法と比べ、最大で約75%の削減が可能です。
低コスト
鋼材は地中に埋設したりL字型の支えを付けたりする必要がないため、使用量がきわめて少なくて済みます。また、挿入する必要がないため重機や大型車両を使わず、付帯する工事も不要なことから、工事全体のコストは大幅に削減されます。
狭小道路にも対応
施工のための大型重機や搬入のための大型車両が不要であること、基礎部の最大幅がわずか1.6mであることから、山間や林間道路など狭小用地においても工事を可能にします。 道路幅が狭くても片側1車線を十分に確保できるため、交通への負荷を最小限に抑えられます。
騒音・振動が少ない工事
杭打機を使わずに工事できるため、従来工法と比べて騒音や振動が少なくて済み、周辺への環境負荷を低減するなど、近隣住民に配慮します。
現地発生土を使える
支柱を支える連続箱型鋼製枠の特殊な構造により、中詰め材に現地発生土を使うことができます。 購入資材や現地発生土の移動を削減し、工事を容易にします。
撤去が容易
道路を傷つけずに設置するため、撤去の際の路面復旧が不要です。
事前調査が不要
鋼杭の打設などが発生しないため、地下埋設物の事前調査が不要です。
架空線移設が不要
杭打機を使わないことから、架空線移設の必要がありません。 これも短工期・低コストに寄与します。
MWG工法と従来工法との比較
道路に穴を開けて鋼杭を打つ、もしくはL字型の鋼材に土嚢などの錘を乗せて立たせる他社同種工法とMWG工法の違いを整理します。
最大のポイントとして、MWG工法は最大で工期を約75%減・コストを約50%減となることです。
設定条件
- 検討延長(m):L=100.00m
- 供用日数:360日
- 防護柵高:H=4m
従来工法A:基礎杭方式
施工方法 | ①油圧バイブロハンマー等で地山にH型鋼杭を挿入して支柱を構築する。 ②支柱間を木製横矢板を設置して完成 |
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概算直工費(指数) | 1.00 |
施工日数 | 28日 |
他社同種工法:L字型鋼材
施工方法 | ①支柱と敷桁を連結して設置。 ②シャットパネルを設置固定し、覆工板および大型土 のうを敷設して完成。 |
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概算直工費(指数) | 0.57 |
施工日数 | 18日 |
MWG工法
施工方法 | ①プレートを設置して連続箱型鋼製枠を展開。支柱を建込み、土砂を投入し転圧する。 ②支柱間を木製横矢板を設置して完成 |
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概算直工費(指数) | 0.48 |
施工日数 | 7日 |
このような方に特におすすめ
ゼネコン、建設コンサルタント、市区町村の関係者の方にお勧めの工法です。
- 法面崩壊場所において緊急災害対策等、早急な対応が求められる
- 従来工法の課題を解決し、より低コストに抑えたい
- 地域の道路幅が狭いが、通行止めはできないので困っている
このような悩み・ご要望がある場合、MWG工法によって解決することができます。
MWG工法の活用事例
MWG工法は、すでに様々な場面で活用されて高い評価を受けています。事例の一部を紹介します。
- 岩手県防災ダム施設整備事業法面補修工事の例
- 岩手県一般国道法面補修工事の例
- 長野県災害防除工事
防災ダム施設の法面補修工事の例
所在地 | 岩手県 |
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仕様 | 防護壁高さ3.0m、T-1.0 |
用途 | 仮設防護柵 |
規模 | 45m |
一般国道法面補修工事の例
所在地 | 岩手県 |
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仕様 | 防護壁高さ4.0m、T-1.3 |
用途 | 仮設防護柵 |
規模 | 90m |
災害防除工事
所在地 | 長野県 |
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仕様 | 防護壁高さ4.0m、T-1.3 |
用途 | 仮設防護柵 |
規模 | 100m |
MWG工法に関してよくある12の質問と回答
MWG工法の設計や仕様、安全性などについてよくある12の質問とそれを解消する回答を整理しました。
Q01:最大落石径は?
落石径およそφ=20cm程度に対応可能です。 斜面勾配、斜面粗度(立木の密度等)、落下高、防護柵高により異なります。
Q02:使用する資材は再利用できる?
メッシュウォール、横繋材は全損扱いですが、その他部材は整備のうえ再利用可能です。 ただし、保証の対象外となります。
Q03:道路の曲線対応は?
メッシュウォールは単位延長がL=5.0mであるため、5.0m単位で曲線なりに折りながら設置できます。
Q04:設計風速は?
設計風速はV=40.0m/sです。 設計基準は「日本道路協会 道路標識設置基準・同解説 昭和62年1月」に準拠しています。 Po=1/16・V^2・CD=1.20(kN/㎡)SI単位系に換算。
Q05:最大防護柵高は?
防護柵の高さはH=3.0m、H=4.0mの2タイプが基本です。 H=5.0mも設計可能ですが、支柱や基礎形状も伴って大きくなります。
Q06:落石の衝突位置は?
防護柵全高の2/3の位置です。 設計基準は「日本道路協会 落石対策便覧 平成12年6月」に準拠しています。
Q07:基礎に詰める土砂の単体体積重量は?
現地発生土で転圧を2回(50cm毎)程度行うことを想定し、γs=16.0kN/㎥としています。
Q08:切土工事に伴い、基礎部に掘削土砂を堆積させることは可能?
原則として基礎部に土砂を堆積させることはできません。
Q09:縦断勾配がある場合の対処は?
ベースプレートはレベルに設置する必要があるため、くさび状のスペーサーを必要とします。スペーサーは木片等で予め道路縦断勾配に合わせて用意する必要があります。 メッシュウォール本体は、道路縦断勾配なりに設置します。
Q10:地震対応は?
設計水平震度Kh=0.20で安定計算していますので、中小規模の地震は対応可能です。
Q11:安定計算、断面計算上の安全率の考え方は?
仮設工事用のため、常時安全率の1.5倍を採用しています。また衝突荷重に対しての部材設計は材料の降伏強度で照査しています。
Q12:荷重の組み合わせは?
- 風荷重時
- 地震時
- 落石追突時
それぞれ単独に計算しています。 地震により落石が発生した場合も、地震収束後と捉えています。強風時は作業ができないため、落石の可能性は低いと捉えています。
まとめ
従来の落石防護柵の設置工事における課題を解決し、低コスト・短工期・狭小地対応を実現するMWG工法の特徴をご紹介しました。
専用の窓口から、担当者による詳しい説明や見積を受けることもできます。 以下までお問い合わせください。