太陽工業コラム

暑さ対策|日差しを跳ね返しヒートアイランド現象を緩和するシェルターの活用

まもなく夏本番。6月時点で35度以上の猛暑日を記録するなど今年も暑い夏が予想されます。近年、ヒートアイランド現象の影響による都市部の気温上昇は顕著で、東京では過去100年間で平均気温は3.3℃上昇、全国平均1.5℃を大きく上回っています。要因としてあげられるのが、アスファルトなどによる「地表面被覆の人工化」、エアコンなどの「人工排熱の増加」、そして「都市形態の高密度化」です。

そんな都市部の暑さ対策に有用とされているのが、街中に木陰で休める<クールスポット>を設けることです。自然の木陰があればいいのですが、都市部ではなかなか難しいため、近年、注目を集めているのが日射反射率が高い白色の酸化チタン光触媒膜を用いたシェルターの活用です。駅舎プラットフォームの屋根、駅前広場、公園、商業施設の屋外広場に膜を用いたシェルターを設置する。それだけで温熱環境は大きく改善。熱中症予防はもちろんのこと、空間の快適性を大きく向上させ、人々の賑わいを生むなど、場の付加価値を向上させ、地域の活性化にも寄与します。

人が感じる暑さのメカニズム

気温が同じでも木陰が快適なのはなぜ?

夏の暑さで注意しなくてはいけないのが熱中症です。気温が25℃以上になると警戒が必要とされ、28℃〜31℃で厳重警戒、31℃以上になると危険とされ高齢者は安静状態でも発生する危険性が高いといわれます。近年、救急搬送者数は上昇傾向にあり、2018年夏場(5−9月)には9万5000人にも達しました。

この暑さという点で着目しなくてはいけないのが実際の気温だけでなく、人が「暑い」と感じる体感温度です。体感温度は気温にくわえ、湿度、風の強さ、路面からの放出熱に大きく影響されます。なかでも路面からの放出熱は赤外放射と呼ばれ、表面温度に応じて電磁波として放出され、温度が高いほど放射量は強くなります。夏の暑い日、黒いアスファルトのような場合には表面温度が60℃を超えることもあり、環境省の調査によれば、夏場、歩行者が受ける熱量が最も大きい場所では、6畳部屋で1000ワットの電気ストーブを10台使用したのと同程度の暑さになるといいます。

木陰が日向に比べて涼しいと感じるのは気温が低いからだと思われがちですが、実際には同じ気温でも日射や路面からの赤外放射が少ないために涼しいと感じるのです。つまり都市部の暑さ対策にとって重要なのは、単に日差しを遮るのではなく、より効果的に日射や地表からの赤外放射を抑制することです。光を遮るために屋根を設けたとしても、反射率が低く熱を溜め込んでしまったなら屋根の表面温度は上がり、体感温度の改善にはつながりません。見た目の明るさ、暗さではなく、いかに効果的に日射を反射させ、表面温度が上昇しない素材を選ぶか。それが都市のクールスポットをつくる重要なポイントとなります。

光を通す膜素材が涼しい理由

一般的な金属、スレートなどの素材に比べ、膜屋根は光の透過率が高いため屋根下空間の温度が高くなると思われがちです。しかし太陽工業の光触媒膜材(白色)は日射反射率が約80%と高く、屋根自体への熱吸収率がきわめて低く、金属屋根と比較すると屋根裏温度は9℃も低くなります。この熱吸収率の低さは屋根下の温度に大きく影響し、夏場のプラットフォーム屋根を対象に温度環境を測定したところ、床面1.2mの高さの体感温度は金属屋根に比べて膜屋根は1.5℃低く、平均放射温度も3℃低いことが確認されています。くわえて最大照度は金属、スレートを大きく上回る16,000lx。膜屋根は他素材に比べ明るく涼しい環境を提供できていることがわかります。

金属、スレートに比べ圧倒的な涼しさと明るさ、膜屋根が生み出す快適空間

●膜屋根

気温:35℃ / 屋根裏面温度:40℃
平均放射温度(MRT):37℃ / 体感温度(作用温度OT):36℃
最大照度:16,000lx

●金属屋根

気温:35℃ / 屋根裏面温度:49℃
平均放射温度(MRT):40℃ / 体感温度(作用温度OT):37.5℃
最大照度:4,700lx

●スレート屋根

気温:37℃ / 屋根裏面温度:55℃ 平均放射温度(MRT):42℃
体感温度(作用温度OT):39.5℃
最大照度:2,400lx

光は透しても熱は通さない光触媒膜

白色とグレーの膜材の日射特性の比較です。白色はグレーに比べて日射反射率が高く、熱吸収率が低くなっていることから膜の表面温度が上がりにくいことがわかります。

図は白色光触媒テントとその他3色の膜材料の波長別の日射反射特性です。 白色光触媒テントはほぼ全領域で80%程度の高い反射率を示すのに対し通常テント(アイボリー)は近赤外線域で反射率が低下。経年変化によってテントが汚れた状態(グレー色)では白色に比べて反射率が半減してしまいます。膜自体が防汚効果を持つ太陽工業の光触媒膜は日射反射率面からも有位といえます。

<酸化チタン光触媒膜の効果>

●熱反射率が高い
白色の光触媒膜は日射を約80%も跳ね返し。光を透光させて明るさを確保しつつ快適な日陰空間をつくりだせます。

●防除性能で汚れに強い
光触媒膜は汚れを化学的に分解除去する酸化チタン光触媒の粒子が膜材と一体化。そのセルフクリーニング機能によって、膜のくすみや汚れを防ぎ、長期間にわたって性能を維持します。

●周囲の空気をきれいに
光触媒膜は排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を除去する機能があるため、緑化などと同様に周囲の大気浄化効果も期待できます。また紫外線除去機能(UVカット機能)も備えており、透過する光の約95%の紫外線をカットします。

膜+水でつくる都市のクールスポット

太陽工業の光触媒膜によるシェルターは高い日射反射率によって膜表面の急激な温度上昇を防ぎ、明るさと快適性を備えた空間をつくり出します。その基本性能だけでも夏場の暑さ対策には有効ですが、さらにこの膜の持つ親水性などを利用することによって、日射を抑えるという受け身ではなく、シェルター自身が植物の持つ蒸散効果機能などを発揮し、よりアクティブに空間温度を制御することも可能です。

打ち水、ミストによって植物の蒸散効果を再現する

都市部のヒートアイランド現象の抑制として効果が高い方法のひとつに壁面や屋上の緑化があります。これは日射量を抑えるだけでなく、植物が持つ蒸散効果によって熱を気化させることによる冷却効果が期待できるからです。一方で緑化はイニシャルコストやメンテナンスコストの負担、条件によっては設営できないなどの問題から導入が難しいという問題もあります。

その解決策として太陽工業が提案するのが超親水性の膜屋根に打ち水をし、水の蒸発冷却効果を利用するという手法です。酸化チタン膜材料は通常の膜材料と異なり、高い親水性を持っていることから表面に水が薄く広がります。これによって水の蒸発潜熱が熱交換の役割を果たし膜下の熱を奪い、くわえて周辺の大気熱も下げる空間温度を低下させる効果を発揮します。

シェルターに霧状の噴射装置を設置し、気化熱効果を利用して空間温度を制御するミストシェルターにも注目が集まっています。ノズルから噴射されるミストは粒子が微細なため肌に触れても不快感がなく、テントの遮熱効果とミストによって膜屋根下の気温を-4〜6℃下げることが可能。たとえばクスノキ林が真夏に気化する量に合わせてミストの量を制御すれば、都市部にクスノキ林を植林したのと同等の効果が得られるというわけです。緑化に比べてメンテナンスも容易なことから、商業施設、公共空間などで採用が進んでいます。

<ミストの効果>

●気化熱効果
空気中に噴霧したミストの気化熱によって気温が下がり涼しい環境をつくりだします。

●低エネルギー
エアコンに比べて消費電力が少なくランニングコストも低く抑えられます。

●不快感がない
噴霧されるミストはきわめて微細なため、肌や服に触れても濡れることがなく、不快なベタつきやジメジメを感じることはありません。

街の顔となるシェルターの事例

日差しや雨を遮り快適空間をつくるという機能性はもちろん重要ですが、一方で太陽工業は製品がいかにして街の風景にマッチするか。その景観美を製品開発の重要なポイントとしてきました。それはシェルターについても同様です。特にシェルターは駅前広場、公園、商業施設の屋外空間など、街の顔、施設の顔ともいうべき場所に設置されるため、その存在が空間といかにフィットするか、そのデザイン性はもう一つの機能ともいうべきものだと考えています。

様々なシーンで活用できる多彩なデザイン

◾デザインバリエーション

<シングルタイプ>

1本の支柱で支えるシンプルな構造。公園や商業施設のベンチスペースなどに。

<コンビネーションタイプ>

ユニットの組み合わせで場所に合わせた多彩な表現が可能。

<バス停・通路タイプ>

周辺の環境に合わせて選べるデザインのバリエーション。

<マウンテンシェルター>

公園、イベント、街の防災拠点などにも。

まとめ

組み合わせによって多彩なデザインが可能

前記の企画品だけでなく、独自デザインへの対応など、太陽工業ではお客様からのあらゆるニーズに応えてまいります。シェルターの持つ優れた機能性とデザイン性で駅前、公園、広場、施設の快適性、美しさを高め、住みやすい街づくりに貢献してまいります。

 

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