太陽工業コラム

【台風被害対策】確実な治水効果を発揮する『連続箱型仮堤防』の活用事例

毎年台風が訪れる日本では、河川や沿岸地域の堤防はきわめて重要な役割を担っています。しかし、諸々の事情により、高さや幅が不足している未完成堤防が約1,500kmも存在しています。

近年頻発している異常降雨の影響により、河川からの溢水や堤防越水による浸水被害のリスクが増大していますが、本格的な堤防嵩上げには新たな用地確保や嵩上げ完成までに時間を要します。そのため、本設堤防完成までの「一時的な堤防嵩上げ」による緊急対策が実施されています。

堤防の嵩上げ(高さを確保する)のためには、築堤に必要な幅(堤防用地)を確保する必要があります。しかし、地域によってこの用地確保は必ずしも容易ではありません。

そして、「一時的な堤防嵩上げ」として低コストを理由に多く導入されている大型土のうには、止水性能の低さや一体性の不足による転倒・流失リスク、耐用年数の短さなどの弱点があります。

一時的な嵩上げにおける大型土のうでは、隙間から漏水して裏法が浸食されるリスクがある(実証実験)

この弱点を解決する対策案として本記事で紹介するのが、連続箱型鋼製枠を用いた仮堤防『連続箱型仮堤防』です。

『連続箱型仮堤防』は、高い止水性能、優れた一体性による安定性、短工期、長期間の耐用年数を同時に実現します。 高さが不足している不完全な堤防にも明日から高い治水効果を付加できるこの方法について、具体的に写真付き事例で詳しく紹介します。

小規模復旧工事にも対応可能なため、市区町村などの自治体での豊富な採用実績を誇るこの方法を、ぜひ参考にしてみてください。

連続箱型鋼製枠とは

ここで紹介する事例では、すべて連続箱型鋼製枠を採用しています。

連続箱型鋼製枠は、亜鉛メッキ鉄線製の格子状のパネルをコイル連結したカゴ(鋼製枠)を複数接続した構造で、分割・延長・屈曲させて設置できます。鋼製枠の内側に不織布を張り、現地発生土や砕石、栗石等を中詰めすることで、連続した土堤を簡単・迅速に構築でき、土留め、堤防嵩上げ工、仮締切工等に使用できます。

連続箱型鋼製枠『マックスウォール』の概要と特徴

マックスウォールは、亜鉛メッキ鉄線製の格子状のパネルを使用しているため、10年程度の使用に耐える耐久性があり、長期間にわたる仮設工にも適しています。

このような高耐久や、中詰め材を選ばない特徴から、東日本大震災の被災地においては、砕石などの資材が不足し、現地発生土や瓦礫をリサイクルしたコンクリートガラなどを使用し、仮設土堤や盛土嵩上げの土留として導入され、海岸部で設置された実績があります。

その優れた特徴を以下、紹介していきます。

特徴1:安定性が高い

仮設工によく用いられる大型土のうは連結しておらず一体性がないため、外力に弱く、一カ所に荷重が集中すると倒れてしまうなど不安定な面があります。連続した鋼製枠のマックスウォールは、大型土のうの4倍以上の外力(約16kN)に耐えることができ、高い安定性を発揮します。

特徴2:土砂の連続性による止水性の確保

内側の枠(下図の赤枠部分)には不織布が貼られておらず、土砂などの中詰め材が連続することによって、大型土のうでは実現できない高い止水性能を確保することができます。

特徴3:耐久性が高く、長期仮設としても使用可能

大型土のうは約半年~3年程度が使用限度であるのに対し、マックスウォールは陸上・土中で10年以上、海水飛沫地域で5年程度の耐久性があります。 東日本大震災では、海岸部において護岸工や土留工として長期間仮設工として利用されました。

 

特徴4:中詰め材を選ばず、土砂・砕石・現地発生土などの充填も可能

土砂に限らず砕石や栗石なども使用でき、また、コンクリートの残存型枠としても利用できます。

 

特徴5:段積み・分割・延長・屈曲可能

標準サイズ(1ユニット)は、1m立法の鋼製枠(セル)が10個連続した構造ですが、これを自由に分割・延長・屈曲させることができるため、施工規模や現場状況を選びません。また、段積みも可能で、現地の形状に柔軟に対応できます。

 

特徴6:従来の大型土のうと比べて25%の工期短縮可能

熟練工を必要とせず、5名で1日約40mの設置が可能です。これは、大型土のうと比べ約25%の工期短縮になります。

堤防の嵩上げや仮堤防における事例

連続箱型鋼製枠を用いて仮堤防をつくる方法として、実際に連続箱型鋼製枠『マックスウォール』が用いられた事例を紹介します。

新潟県松橋の一級河川中ノ口川堤防嵩上工事

このケースでは、約460mもの区間において堤防高さが不足しているため嵩上げが必要で、用地確保まで4~5年、完成まで8年という長い期間を要する計画であったため、仮堤防を築くことが検討されていました。 従来の大型土のうによる嵩上げでは止水性能が不十分であり、また8年もの長期間の連続使用に耐える耐久性を確保することが難しいという課題がありました。その解決策として、陸上で10年程度の耐用年数と連続した土堤構造による高い止水性と一体性による高い安定性を誇るマックスウォールが採用されました。

本施工現場では、天端はプレート等で転圧したほか、中詰材に築堤材を使用することで止水性を向上させています。

施主 新潟県 新潟地域振興局 地域整備部
施工場所 新潟市南区松橋/中塩俵
現場状況 河川堤防(天端)
使用タイプ MW-1000(延長10m /基,高さ1m)
中詰材料 土砂(築堤材を使用)
使用数量 46基(460m)
設置段数 1段
施工時期 平成29年9月
施工時間 約6日(設計:80m/日)

 

埼玉県不老川緊急治水対策工事

施主 埼玉県庁
施工場所 埼玉県入間市
使用タイプ MW-1000(延長10m /基,高さ1m)
使用数量 7基(70m)
施工時期 2018年1月
施工目的 河川堤防暫定嵩上げ

 

宮城県大森川ほか河川維持工事

施主 宮城県
施工場所 宮城県石巻市
使用タイプ MW-700
使用数量 35基
施工時期 2017年4月
施工目的 河川維持堤防嵩上げ

 

青森県馬淵川外河川維持工事

施主 青森県三八地域県民局
施工場所 馬淵川外河川
使用タイプ MW-1000(延長10m /基,高さ1m)
使用数量 130m
施工時間 約2日
施工目的 河川維持工事

 

一級河川中之口川堤防嵩上工事

施主 新潟地域振興局地域整備部
施工場所 中之口川堤防
使用タイプ MW-1000(延長10m /基,高さ1m)
使用数量 470m
施工時間 約5日
施工目的 堤防嵩上工事

連続箱型鋼製枠に関する問い合わせ

暫定堤防などの堤防かさ上げ工事において従来の課題を解消する新たな選択肢として、連続箱型鋼製枠マックスウォールを用いた『連続箱型仮堤防』のソリューションをご紹介しました。

マックスウォールは仮設資材でありながら長期の使用に耐え、工期を短縮できます。そのうえ、特殊技能工や熟練工も必要としないことから全体でのコストを削減できる優れた工法です。

用地が限られたり高い耐用年数が求められたりする現場における解決策して、特に地方自治体で多くの採用実績があります。マックスウォールについてさらに詳しく知りたい方、担当者への問い合わせを希望される方は、以下のリンクへアクセスしてください。

>>太陽工業株式会社 連続箱型鋼製枠 「マックスウォール」

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