丹波山村役場が「2024年度グッドデザイン賞」を受賞

小さな村のみんなの家

大型膜面構造物(テント構造物)や土木・物流資材などを手がける太陽工業株式会社(東京本社:東京都世田谷区、大阪本社:大阪市淀川区、社長:能村 祐己)は、人口約530人で離島を除いて関東で最も小さい自治体である丹波山村(山梨県)から役場の設計、施工を受注し、2023年3月に完工しました。今回、この丹波山村役場が2024年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。

グッドデザイン賞 審査委員の評価

小さな自治体にどのような町役場が望ましいのか。これは、設計者が建築の本質を考え形にしたものだと感じられた。ハコモノにならない多大な工夫と労力がさかれたまさに“良いデザイン”の一つである。人や活動と形としての建築の結びつきが強くなる一方で、建築としての形が見えづらくなっていくことも昨今の流れのようにも思われるが、この計画においては、おおらかで力強い木造のフレームにある種の永続性を感じられる空間が生み出されている。プレゼンテーションの中にあった“神社を建てるような思い”にはこのプロジェクトが持っている、これから建築設計者が立ち向かっていくための“旗”のようにも感じられた。

グッドデザイン賞 応募資料への記載内容

丹波山村役場は、人口減少に直面する山村の再生を目指した自然と文化が調和する村役場がデザインされています。森林と水源の保全や地域文化の継承などの地域の価値を再発見し、コミュニティの持続可能な発展を支援する拠点となることを目的としています。

 

□デザインのポイント

  • 庁舎本来の自治体業務に加え、個人の営みやNPO、民間の活動の場をシームレスに包み込むワンルーム庁舎
  • 街並みに沿った木造の大屋根と、地形に沿ったRC造の低層部により人の営みと村の自然の関係を空間化
  • 議場の多目的ルーム化やNearly ZEB*化など厳しい環境の中で暮らしてきた地域の歴史を継承

 

□経緯とその成果

丹波山村は、急峻な渓谷の中のわずかな土地をやりくりしながら、地域の自然に寄り添ったさまざまな生業を重ねつつ、村民が肩を寄せ合って暮らしてきた村である。庁舎の基本要件を設定するにあたり、このような村の営みの姿を知恵として参照した。「庁舎機能」と「社会サービス機能」、「地方創生のためのまちづくり拠点機能」の3つの要素を、議場の多目的ホール化など空間の多用途化によりコンパクトに実現することを要求条件として、「見たことのない村役場」をデザイン目標とした。デザイナーとなる設計施工者の選定は、創造的なデザイン目標の達成に主眼を置いた性能発注方式によるプロポーザル方式により実施し、木造の大屋根に覆われた『みんなの家』となる提案が採用された。床面積は既存庁舎の約3分の2に縮減されたが、村民が利用できるスペースは豊富に用意されている。また、多目的室は地域の様々な活動の場として活用されている。

青梅街道と奥多摩の山々をつなぐ大屋根庁舎

丹波山村役場は、村の中央を東西に貫く青梅街道に面して建てられています。村に住む⼈、⼭を訪れる⼈、街道を通りすぎる⼈、様々な⼈が⾏き交うこの場所に、村のシンボルとなるカラマツ集成材の大屋根をもつ役場が誕生しました。村民と登⼭客や⻘梅街道を通る⼈が触れ合い、語り合えるような開かれたイメージをもつ2階建ての建物です。

役場は、鉄筋コンクリート造、鉄⾻造、⽊造のハイブリッドな構造となっています。鉄筋コンクリートの基壇の上に、鉄⾻の柱梁を建てたあと、⽊造屋根を架構しました。北側法⾯の⼟砂崩れに備え、本⼯事に先⽴って法⾯補強⼯事を⾏なっており、木がもつ温もりある優しい外観の一方で、十分な堅牢性をもっています。役場機能はもちろんのこと、観光拠点としての機能、⼦供たちの遊び場、お年寄りの寄合の場、災害時の拠点、お祭りの舞台など、さまざまな活動の拠点となります。⻘梅街道に沿って設置したテラスはバスの待合スペースとしても活用されています。新庁舎の内外には⾊々なスペースを設置しており、⽤がなくてもふらりと⼈が集まってくる村の方々の家のような役場となっています。

災害対策と環境配慮

災害時や有事の拠点となる役場では、3⽇分の⾮常⽤電源、3⽇分の雑⽤⽔、3⽇分の飲料⽔(PETボトル備蓄)を備える備品倉庫を設けています。また、排⽔貯留槽や太陽光発電など、災害時の機能維持に配慮した設備も備えています。

斜⾯地の敷地特性を⽣かした⾃然換気に有利な屋根形状を採⽤するとともに、⼤きくひさしを出すことで⽇射遮蔽を徹底しました。これによりランニングコストとCO2排出量の削減を図っており、環境にやさしい役場となっています。

こうした高い省エネ設計の徹底により、レジリエンス強化型のNearlyZEB*を取得しました。

グッドデザイン賞受賞概要

①受賞:小さな村のみんなの家 丹波山村役場

②カテゴリ:公共の建築・空間

③受賞企業:

丹波山村

株式会社山下PMC

株式会社NHA

太陽工業株式会社

④事業主体名:丹波山村

建築概要

所在地:⼭梨県北都留郡丹波⼭村2450

施主:丹波⼭村

CM:株式会社⼭下PMC

設計施⼯:太陽⼯業・橋本尚樹建築設計事務所(現・NHA)共同企業体

着工:2021年9月

規模:

地上2階建て・鉄筋コンクリート造⼀部鉄⾻造、⽊造

建築⾯積868.13㎡(建ぺい率25.31%)

延床⾯積1079.02㎡(容積率30.27%)

⾼さ10.300m

敷地⾯積3429.33㎡

 

※Nearly ZEBは再生可能エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量をゼロに近付けた建築物で、基準一次エネルギー消費量から75%以上の削減を示す認証。

太陽工業株式会社について

太陽工業は、経済性、施工性、透光性、デザイン性に優れた大型膜面構造物のリーディングカンパニーです。「膜の無限の可能性を引き出し、お客さまに感動と快適な環境をお届けします。」の企業理念のもと、軽くて丈夫な素材の特性を活かし、巨大ドームの屋根に象徴される各種建築事業をはじめ、土木や物流、さらには環境分野などにも事業を展開し社会の安全・安心を支えています。
イベントコンサルティングのTSP太陽株式会社ならびに施設運営のアクティオ株式会社をはじめとするグループ会社とともに「世界を、やわらかく。未来を、あたたかく。」することを目指しています。

  • TOP>
  • ニュース>
  • 丹波山村役場が「2024年度グッドデザイン賞」を受賞